東京・芝公園・日本能率協会会議室
MM総研代表取締役所長 中島 洋
主催:IT協会「グループCIO懇談会」
大手ユーザー企業のグループ情報システム会社の社長、役員を中心に開催されている研究会で座長を務める中島洋MM総研所長の基調スピーチである。今後の情報システムの方向性について問題提起した。
当分の間、企業は地球温暖化防止のための各種の活動を行わなければならない。その際に最も有力な道具となるのが情報通信技術である。言うまでもなく、情報通信技術を用いて温暖化問題に対応するのを「グリーンIT」と総称しているが、グリーンITには2面がある。電力多消費である情報通信装置の省電力化の取り組みが一つの側面で、もう一つが、社会全体の仕組みを省電力化するためにITを利用するという側面である。
前者には、非効率なサーバーの利用方法を改善するための仮想化の技術、発電所の近くに情報処理を集中するデータセンター建設、太陽光や風力などの再生エネルギーを利用して化石燃料から出る炭酸ガスを削減する技術、電力消費の多いサーバーの冷却に冷気や雪氷を利用する技術などが提案され、実行されている。まだまだ多数のアイデアが出てくるだろう。自前の情報システムではなく、SaaSやクラウドコンピューティングによって、温暖化対策を講じているサービス業者に委託する方法もある。大手企業は行政から「環境報告書」の提出、炭酸ガス削減の実績報告を求められるので、情報システム部門もその努力が必要だが、アウトソーシングによってその負担を減らすこともできる。
後者については、さまざまな観点がある。自動車業界のように商品を環境対応型にするのも一つ。テレビ会議システムのように人間の移動を減らして炭酸ガス負荷を減らすシステムの提供や利用、シンクライアントによる在宅型就業などの仕組みの利用、スーパーから購入する商品の製造・輸送にかかる炭酸ガス負荷のデータを消費者にSaaSによって提供して日常生活の環境負荷を「見える化」するシステムの構築など、幅広く試みが始まっている。情報技術の専門家として、自分の企業に何ができるかを提案することで、企業グループのCIOとしての責務を果たしてもらいたい。