会場 丸ビルコンファレンススクエア
主催 日立ソフトウェアエンジニアリング
現在の企業経営の課題は、長期不況耐える低コスト運営の体制づくり、さらに市場構造の激変による在来ビジネスの停滞とこれを打破するための新ビジネス創造の挑戦と言ったところがある。いずれもクラウドがその課題解決の手法
を提供してくれる。クラウドはICT投資の軽減の強力な道具である。仮想化技術、アウトソーシングなどによってパフォーマンス向上しながら負担軽減できるか。また、内部統制、IFRSなど次々と変わる企業管理の制度の変化にも、自社でシステムを構築していたのでは到底、間に合わないが、クラウドは外部にある情報資源の効果的な利用手法を提供する。機動的に制度の変化にも適応できるのである。
特に当面する最も大きな制度変化が「国際財務統計基準=IFRS」の動きである。これは投資家のための企業価値の評価を客観化するために、国際比較可能な業績評価基準を制定するものである。情報ベンダー、ユーザーとも、
クラウド時代の新しい制度激変として、考察する必要がある。
すでに、2005年からEUで強制適用され、2011年にはカナダ、インド、韓国(金融除き09年から)などで適用が予定されている。SOX法が先行した米国は少し遅れて、09年から任意適用が始まって、14から16年に強制適用することが検討されている。日本では今年、10年から任意適用で、12年までに強制適用の可否を決めるが、早ければ15年から強制適用になりそうだ。海外の制度が同一基準になれば、それと足並みをそろえなければ投資が日本から逃げてしまう恐れがある。
しかし、その内容は従来の考え方と大きく異なり、問題含みである。本当に日本でこれを採用するのか、大いに議論してほしいところだ。主な相違点を例示すると、売上高計上が従来の日本製品出荷時点から国際基準では顧客納品時点に変わり、利益計算が従来、収益から経費を引く損益計算書ベースだったのが、期末純資産から期首純資産を差し引く財務諸表ベースに変わる。その純資産も従来は簿価も可能だったのが時価計算となって、相場の変動によって、その期間の本業のビジネス業績に関係なく大きく変動することになりかねない。ビジネスを適正に遂行するための管理会計とは別物である。
いずれにしろ、投資家に見えやすい財務報告基準を、という流れは止められないので、この基準に合わせた財務報告書の作成、公表の厳格化が情報システム部門には課され、これを実現するアウトソーシング手法として、クラウドの
活用範囲が拡大するのではないか。