主催 (社)テレコムサービス協会 沖縄支部
久しぶりの沖縄での講演だった。情報通信企業の経営者や幹部に向けてのものだったので、2つの点を強調した。「クラウド特区」と「中国・アジアの急成長をばねにする沖縄の飛躍」である。
まず、総務省が計画しているという「クラウド特区」についてである。コンテナ型データセンターを念頭に置いて、ネックとなる消防法の特例などが実施れるとみられているが、沖縄もそれに立候補すべきだという点を強調した。
巷間では、誤った説が流れている。雪や氷などの冷却資源が豊富な北海道が適している、という俗説が語られているが、これまでの海外のコンテナセンターが寒冷地に設置されたという話を、寡聞にして、まだ、知らない。施設を簡略化するのがコンテナセンターの特色であるので、そうなると、零下にさらされる地域では、結露対策をどうするのか。サーバーを冷やす目的を追求するあまり、雪や氷を過剰に溶かすと、雪氷面によって太陽光を大気圏外に反射して熱を逃がしている雪氷の機能を損なうのではないか。
北海道でコンテナ型センターの実験をするのも良いが、そこだけが唯一だと決めつけないことだ。沖縄は夏の暑いときでも、ます、34度を上回ることはまれである。大体、33度程度で、8月は、福岡や鹿児島、大阪、東京、名古屋、前橋、宇都宮、札幌、旭川などの方が高温の日も多い。なぜ、沖縄は33度止まりなのか。それは海風が吹いて、島を冷やしているからだ。冬も零下にはならないので、結露の対策に振り回されることはない。数百度と言うサーバーを冷やすのに、自然の海風による「空冷」という手段がある。温度の低い海洋深層水の利用など、まだ、未開発の技術もある。つまり、特区を一地域に限らず、沖縄も立候補すべきである。
もう一つは、中国、アジアに進出する日本企業の情報通信拠点としての沖縄の役割である。中国やアジアの現地に装置とソフトをセットで設置することは盗難による不正複製やデータ漏えいなどのリスクを負う。ルールが厳しく安全性の高い日本のセンターにソフトとデータを置き、現地にはシンクライアントで対応する、というケースが増えてくる。その際には、通信での遅れが少ない沖縄の地理的利点が生かされる。この観点から人材の育成、投資を重点的に行うべきだ。これは日本の産業界の競争力を強めるためでもある。
沖縄はアジアの結節点にある、という歴史的な存在価値をもう一度蘇らせるべきである。