世界・アジアと繋がる、九州・沖縄の役割~観光産業の視点から

世界・アジアと繋がる、九州・沖縄の役割~観光産業の視点から

福岡市ホテルニューオータニ博多
パネリスト(敬称略):
中田 宏 前・横浜市長
村上 憲郎 グーグル(ジャパン)名誉会長
高野 登 元リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー東京支社長 
近藤 均 ティーシスジャパン株式会社取締役社長
司会:MM総研代表取締役所長 中島 洋 
主催:日本経済新聞社西部支社

 リーマンショック以降、世界の経済地図が大きく塗り替わりつつある。中国・東アジアの急速な成長で、世界の中で「消費市場」としてのアジアの比重が大きくなる一方で、日本の立場が、「アジアを代表して欧米諸国に対応してゆく」ところから、経済大国・中国、急進展のアジア諸国・諸地域に対して「ファッションなど先端文化発信、産業技術・ノウハウ供与など、対等の仲間として向き合う」という関係へと変化してきた。観光産業の視点から、世界の観光へと目を向けはじめた中国、アジアの国民を、最も至近の距離にある九州・沖縄は、どのように誘致してゆけば良いのか。

 中田横浜市前市長は横浜を観光都市として再生するために行政と民間が一体となった組織を立ち上げた経験をもとに、官民一体の運動を起こすことを提言。村上グーグル名誉会長は、ストリートビューやグーグルマップなどを利用して観光地の魅力的な映像を発信する京都市などの活用事例を紹介、高野元リッツ・カールトン東京支社長は、観光客を誘致するキーワードとしてMICEを紹介した。MICEはMeeting(会議)、Insentive(報奨旅行)、ConferenceまたはConvention(大会議)、Exibition(大展示会)のことである。イベントを仕掛けることの重要性である。また、近藤ティーシスジャパン社長は、グローバルなカード決済が米国、欧州の2拠点に加えてアジアの消費経済の急拡大に伴ってアジアに拠点を置くことになった経緯や観光誘致にはそのインフラとして金融決済システムの整備が必要であることを指摘した。

 特に中田前市長は観光地に不可欠なインフラとして国際空港の充実を訴えて、現在の地方空港開設の戦略なき行政を指弾し、国際拠点空港へと視点を変えて観光インフラとしての整備を訴えた。さらに道州制などによって、広域の利益再配分の考え方を持ち込めば、各県に一つの空港というバカげた発想からの脱却が可能だと指摘した。各県の観光ではなく、九州や沖縄をワンパッケージにした観光政策の必要性が浮き彫りになった。

 その観光誘致の有力な道具として、インターネットの映像による発信という議論も聴衆には大きな感銘を与え、パネル討論後の名刺交換会では、村上名誉会長は多数の参加者に取り囲まれてその方法について問いただされていた。

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