広がるクラウドの領域~ユーザーから見た可能性

広がるクラウドの領域~ユーザーから見た可能性


パネリスト
  ㈱グラマラス 代表取締役 村田 まゆみ 様
  国立大学法人静岡大学 客員教授 山﨑 國弘 様
  大成建設㈱ 本社建築本部建築部C&N担当 課長 田辺 要平 様
  千葉県 総務部情報システム課 電子自治体推進室長 布施 正之 様
  司会:中島洋・MM総研所長
主催:日経産業新聞・ASPIC
実施日:2011年7月5日
場所:東京・大手町日経ホール

 2011年度のASP・SaaSクラウドアワードではユーザー部門が新設された。パネリストには、グランプリ受賞の大成建設をはじめ、部門最優秀の企業の代表者に参加してもらった。大成建設は業界標準のオンライン電子調達の仕組みと社内システムを効果的に組み合わせ、千葉県は県内市町自治体の電子調達を共通のクラウド基盤で実施する先進的な試みを評価された。静岡大学は、研究者がばらばらに利用しているサーバーを仮想化して効率化し、外部のクラウド基盤を利用してきわめて効果的な仕組みを実現していた。

 最もユニークだったのはグラマス社だった。エステなどの美容関連の店舗の経営管理、顧客管理のサービスをクラウドで運用して提供するシステムを利用して収益力を高めている。このシステムでは、店の側は忙しい店員でも簡単に入力し、結果を利用する。ただし、問題は、そのサービスは姉妹会社のシステム会社が開発し、提供していることだ。単なるユーザーではなく、提供ベンダーとしての性格が色濃く出ている。

 筆者が委員長を務めている審査委員会では、この企業はベンダー部門で参加すべきではないか、という意見も出され、長時間、議論が交わされた。 議論の結果は、ベンダー部門として評価する、というものだった。このようなユーザー部門とベンダーが一体化したようなサービスが出現するのは、まさしく、クラウドの進展によって、情報システムを開発してゆく際に、ユーザーとのコラボレーションが緊密になったこと、また、ベンダー、ユーザーの境目がなくなってきつつあって、ユーザー側がベンダーに転換するような事態が生じていることの好例である、ということに落ち着いた。

 今回5回目になるこのアワードでユーザー部門を創設したのは、ネットワークをベースにしたサービス形態が急速に多様化していることを反映したものだが、現実のクラウド世界では、主催者側の想定を越えて、さらに多様な形態が生まれているということを実感させられた。

最近の講演

中島情報文化研究所 > 講演情報 > 広がるクラウドの領域~ユーザーから見た可能性