東京・信濃町・明治記念館
MM総研代表取締役所長 中島 洋
主催 : 内田洋行
内田洋行からは、昨年のリーマンショック以降の破局的な経済危機の中で、「難局を打破するヒントを」と依頼されて、何度か、同じタイトルの講演を行ってきた。その都度、内容が発展してきているが、今回は、「日本経済--歴史的な転換点」という視座を持ち込んだのが大きな変化である。
まず、「世界同時不況からの脱却=経済世界地図の激変」という時代認識が前提である。
米国一極中心の資本主義は、多極化し、米国は世界の多極の1つに変化した。アジアにも大きな極ができつつあるが、現在の成長力から見て5年後、10年後にはアジアの中心は中国になるだろう。アジアも多極化するが、日本はアジアの中心の多極の1つに地位は低下するだろう。 現在は中国を「安い労働力を提供する下請けの国」と思っているが、この考え方は近いうちに逆転し、「中国は巨大な販売市場、日本が中国の下請けの位置になる」という可能性を考慮すべきだ。
未来の発展産業は「地球環境」を軸に展開する。「地球環境問題への産業シフト」が起きる。鳩山首相の「二酸化炭素排出量を2020年に1990年の25%に減らす」という国際公約は産業の根本的変革を要求している。これに対応するため、企業は経営革新の好機を迎え、長らく先延ばしになっていた業務プロセスの見直しを余儀なくされる。これはITの出番である。また、新市場創出の好機である。もちろん、激変も引き起こすことを覚悟しなければならない。
これに応じるための道具として情報通信技術も新たな展開を見せるだろう。すでに登場している情報通信技術も、フル動員される。経営コスト圧縮、内部統制、環境対応技術、安心・安全の社会体系 、仮想化、クラウド、グリーンICT、「見える化」、テレビ会議などの高速映像…これらはグリーンIT実現を促
すキーワードである。
最後に、新政権の登場と衝撃的な新政策である。一言で言うと「ハコモノからソフト、ヒトへの投資」である。構造転換は試行錯誤で新しい体系はいつ確立するか不分明だが、進展するにつれて、新しい風景が見えてくるだろう。