静岡市
MM総研代表取締役所長 中島 洋
主催 静岡県ソフトウェア事業協同組合
テーマは10月に行った内田洋行のフォーラムでの基調講演と同じだが、静岡では内容を大きく変えた。特に強調したのは「世界同時不況からの脱却=アジアを中心にした経済世界地図の激変」というテーマだった。米国中心に資本主義が動いてきた20世紀後半から21世紀初めまで、日本はアジアの唯一のリーダー国だった。しかし、中国の急成長によって世界経済は米国と中国の2極構造へと移行する可能性が大きくなってきた。その中では、日本はアジアの中心の多極の1つに役割を低下せざるを得なくなった。アジアだけをみると、中国中心の新経済圏を形成する可能性もある。その時に日本はどうするのか、真剣に考えてみる必要がある。
特に、ソフトウェア産業にとっては、中国オフショア開発の意味を根本から考え直す必要がある。中国自体の経済が小さかった時期には、中国のソフトウェア需要が小さかったが、経済大国の仲間入りを果たした中国には、国内に大量のソフトウェア開発需要を抱えるようになるだろう。
その時に役に立つかもしれないのは、中国の前を走って経済成長を遂げた日本の産業を支えた情報システムのノウハウである。中国社会は日本のソフトウェアを必要にする時期が来るだろう。中国は日本にとって労働力を提供してくれる「下請け」ではなく、日本から資源を提供する「市場」になるのである。「上から目線」で中国を見られる時代はもう終わりかもしれない。中国が大事な顧客になるのである。まかり間違えると、日本の側が下請けになって、立場が全く逆転するかもしれない。
「大連をはじめとして、いくつかの都市に行くと、熱心に日本語を勉強してくれて安く、日本向けのコールセンターが運営できる」などと、中国人が日本語をしゃべることを喜んでいるが、これも不自然なことになるかもしれない。日本人の側が中国語をしゃべるようにならないと成長しつつある巨大市場「中国」の中に食い込んでゆけないかもしれない。国際関係の従来の構図は完全に崩壊しつつある、ということを自覚して、次の時代の企業ビジョン、国家ビジョンを至急に練り直さなければいけないのだろう。