■講師:中島 洋 MM総研所長
■主催:青森情報サービス産業協会
■実施日:2010年11月4日
■場所:青森市・青森国際ホテル
クラウドは「汎用コンピューター」「PC革命」「インターネット登場」に続く「第4の情報革命」である。基本的には情報革命の継承である。これまで萌芽としてあった変化が「革命」という大規模な社会変動を引き起こす。もちろん、革命とは社会の片隅で、「こうあって欲しい」と切望していたことが実現する、という側面がある。青森県では来場者に主婦の姿が多かったので、「安心・安全の防波堤」としてのクラウドの可能性に重点を置いて話した。某小売り大手の事例を紹介して、情報通信の力を使って、小売りサービスがいかにして消費者に安全・安心を保証するか、解説を試みた。
某小売り大手は、各種の業態が合併、派生した流通のコングロマリットで全国に数千の店舗がある。その顧客からの苦情を受け付けるコールセンターでは、消費者からの苦情をデータベース化しているらしい。事件はその消費者センターに寄せられた苦情・問い合わせから発覚した。
問い合わせは、卵アレルギーのある子供の発症の原因についての問い合わせだ。アレルギーの症状のある子を持つ母親は、常日頃、食品の成分表示点検し、食材に卵がないことを確認して加工食品を購入しているのだが、今日、子供に卵アレルギーが出たので調査して欲しいという依頼。それが一日のうちに類似の問い合わせが全国合計で10件を超えた。センター集中でデータベース管理し、常時、類似の事案がないかを検索して分析しているからこそ容易に発見できた。数千軒の店舗でたったの10軒で起きたものが発見できた。従来なら、100件程度が起きても、なかなか動き出さないだろう。100分の1以下の店舗で起きたことが顕微鏡で調べるようにして発見できるのは情報技術の賜物である。
さて、小売り側では、顧客のレシート番号を元にレジのサーバーに保管されている10件のデータを取り出して共通の食品アイテムを抽出して自動的に照合し、結果として某食肉加工品がすべてに共通していることが瞬時に浮上した。しかし、素材表示に卵は無い。分析した結果、確かに卵が入っているのが確認できた。
毎日、膨大な販売データが個別小売店に散在。これは効果薄い。集中解析で意味が浮上するのである。膨大な情報の中に有意味な「知識」を発掘する。従来はこうした販売情報は売れ筋にしか利用されていなかったが、今後は、中毒などの健康や生命にかかわる情報も、わずかな異常の事例で補足できるようになった。クラウドになって、膨大な情報を全国から収集して解析することが容易になる。小売り業界の新しい社会的価値が生み出されそうである。