■ 講師:中島 洋 MM総研所長
■ 主催:日本経済新聞
■ 場所:東京・大手町日経ホール
クラウドへの関心は、やっと、専門家の領域から一般ビジネスマンの関心へと移ってきたようだ。会場の日経ホールには収容しきれず、隣室や広場でテレビ聴講も多数出たそうである。今回のセミナーの講師を日経新聞社から依頼されたときに「クラウドが変える企業経営」という趣旨だった。うっかり、その
演題で引き受けた。しかし、よく考えると「クラウドが変える」というのはおかしい。企業経営を変えるのは、あくまでも経営者そのものである。変えるのは意思決定する人間である。誤解を与える表現だった、と、その事をまず、冒頭でわびた。
あくまでもクラウドはツールに過ぎない。クラウドを使って経営者が企業経営を変える。しかし、ツールとして企業経営を変えるとしても、目標があって、そちらに向かって企業経営を変えるので、その目標の認識が明確になっているかどうかが、企業変革の成否を握る。クラウドは強力なツールだが、その成功を保証するものではない。
それでは、いま、経営者の共通の課題は何か。
1.世界経済の中心の移動に伴う事業展開
世界地図は「米国一極集中」から「多極分散」へ と変化している。その中で(1)巨大化する中国とどう付き合うか、日本企業復活のバネとしてのクラウド(2)アジアの中心地「沖縄」の優位をどう生かすか
2.社会の課題である環境問題などに伴う規制にどう対応するか
地球環境の保全、安心、安全、健康を守る(3)「by ICT」で社会ニーズに応える、トレーサビリティとモニタリング
3.本業への集中
企業・自治体のアウトソーシングへの傾斜(4)激変するIT投資と企業コンセプト、遊休資源の再認識と活用(5)経営資源の集中と周辺業務の外部委託、アウトソーシング
4.業界の再編制
合従連衡の時代へ(6)産業・社会構造変化に伴う迅速な再編成、クラウドによるシステム再構成
共通の課題はこの4つに集約されるだろう。クラウドは目標を明確にした企業にこそ強力な武器になるのである。