■ 講師:中島 洋 MM総研所長
■ 主催:証券懇話会 労務問題懇談会
■ 場所:東京・茅場町・証券会館
主催者は、中小の証券会社の経営者の勉強会である。時折、ITの動きがテーマになる際に講師として呼ばれる。メンバーの皆さんはITの専門家ではないので、企業経営や企業の成長、成長するベンチャーの動向などに主眼を置いて話をするように注文を受けている。元々、新聞記者として情報通信の記事を書いてきた筆者にはぴったりの注文である。
今回の主眼はクラウドのメリットは何か、という点だ。すでに1、2年前に議論は通り過ぎた感はあるが、クラウドへの関心が専門家から一般のビジネスマンや経営者層にまで広がっているので、丁寧に、メリットの解説をした。一般に分かりやすくクラウドの意味するところを解説すると「水道や電気のように簡単に情報通信技術を利用できる」という環境が整いつつある、ということである。
クラウドがいかにしてそれを可能にしたか。情報通信技術を利用するコストが下がったのである。クラウドでは、多数のユーザーが共用で情報資源を利用するので「割り勘」によって安くなった。また、すでに準備ができたソフトやサーバー、ストレージなどの情報資源を使うのでシステム構築が容易で、短時間でシステムを使い始め、また、拡張や縮小も柔軟にできる。ベンチャーなどが起業する際にもクラウド利用で起業のハードルが低くなった。また、クラウドを支えるビジネスでのベンチャーも多数、誕生してきている。
企業経営者にとっては、「所有から利用」への経営手法の転換を促す。インターネット通じてソフト・ストレージ・回線などの情報資源を随時レンタルでサービスを受けられる(利用時間だけ料金を負担)ので、自社専用に所有している必要がない。
こうした点を実例を交えて解説した後、質疑応答に入ったが、質問は、「この仕組みは中小証券会社でも共用の仕組みを使えるか」という点に及んだ。監督官庁の規制の変更など、そのたびごとにシステムを手直しするコストは各社、相当に上る。これを共用のクラウドで行えれば、手間もコストも大きく下げられるのではないか、との質問である。
どなたか、前向きの回答をお持ちの方がいたら、筆者まで一声をお掛けください。