まだ十分な情報が集まらない中だったが、今回の大震災で重要に感じた事柄をまとめて理事長として組合企業に対して議論の材料を提供した。毎月一回の「協議会」と呼ぶ会合での講演である。久しぶりに理事長の講演がある、ということか、あるいは大震災にかかわる内容ということから関心を呼んだか、会議室の定員を超える40人近い参加者があったか。
まず、ITが役立った分野として震災直後から数日間、「安否確認」にツイッターやミクシィ、グリー、フェイスブックなどのSNSが挙げられる。阪神・淡路震災のころにはまだ、携帯メールがなかったので、登場したばかりのパソコンによるメール、ホームページなどが情報交換の道具として活用され、国内でのインターネット普及を促がした。今回は『日経トレンディ』の緊急調査で、情報収集や安否確認に使われたメディアとして、パソコン、携帯によるメールが半数以上の回答を占めてトップだったが、新顔のツイッターは20%弱でラジ
オに次ぐ高率だった。
ということで、筆者も若者たちに勧められて、現在ツイッターを使い始めたところである。ニューヨークにいる娘との対話が楽になった。時折、朝食の内容を記すと、塩分が多すぎるから気を付けてね、と忠告が飛んでくる。
情報システムの危機が顕在化した問題点もあった。データセンターなどの施設の従来の災害対策が生ぬるいことが痛感された。耐震、免震構造などで「防災」に力を入れていたが、津波対策は想定が甘かった。停電時の自家発電も、最大で3日間程度を準備しているが、3日では電力は復旧せず、また、自家発電の燃料補給も、道路が寸断され、渋滞に阻まれてタンクローリーが到着できない懸念が浮上した。こうなると、データセンターは停止する可能性があることを前提にバックアップ、ディザスターリカバリーの仕組みを作ることが不可欠
である、という結論である。
情報通信体系の根本的作り直しの方向は、巨大集中システムのもろさを認識して、広域分散処理体系の構築へと向かわなければならない、ということである。これはクラウド化の加速と遠隔地をネットワークで結ぶビジネス・コンティニュイティ設計の思想が必要になる。また、通勤地獄、帰宅難民の困難を回避するために、テレワーク型作業体系へのシフトも急務だろう。
また、自治体情報の電子化の緊急性、住基ネットワークを基礎にした国民ID制度の確立の急務も肌で感じさせられた。