このセミナーは東日本大震災の前々日の開催だった。沖縄にデータセンターを開設し、すっかり沖縄視点でアジアを見るようになった安藤証券の安藤敏行社長の提案で、証券業界の経営者仲間たちに沖縄をアピールしようと企画された。「急成長するアジア地域で日本産業界が活動する情報拠点」として発展させる、という視点である。もちろん、その中で東京や大阪、福岡などの地域とは「同時被災しない」という地理的特性から、DR(災害時情報資源回復)・BCP(事業継続計画)の拠点となることは強調したが、それよりもソニーグループのロジスティック会社「ソニー・サプライチェーン・ソリューション」や米国のクレジットカード決済大手の「Tsys」のデータセンターのように、アジアの情報拠点としての位置づけを紹介し
た。
それよりも会員の経営トップたちが関心を示したのは、沖縄は琉球王国時代からアジアの交易のハブだったこと、明治政府と日本帰属の交渉が整った時に、中国をはじめ、アジアの諸国と高い国境ができて切り離されたこと、その後、米国施政権下でも、アジアどころか日本とも切り離されて「米国」になったこと、また日本に復帰した後も、中国やアジアとは「日本経由」で交易したこと、地理的には日本経由ではなく、独自にアジアの一地域として活動する方が沖縄の発展には可能性があること、などの論点だった。
そのさなかに、大きな地震の揺れがあった。振幅の大きな長周期の地震で、三陸沖の海洋性の地震である、と見当を付けたが、ケータイで確認すると、東北地方の太平洋岸では震度6の強震だった。
会員の一人が数日前に富士山上空に地震雲がかかっていた、と披露したので、地震雲が本当にあるのだな、と感じ入った次第である。しかし、その2日後に、さらに巨大な地震が待ち構えているとは、その時にはだれも思わなかった。
そして東日本大震災。その後の電力不足。データセンターの74%が首都圏に集中している日本の情報インフラには大きな打撃である。その情報インフラのバックアップ基地としての「沖縄」が再度、注目されるようになったのは周知のとおりである。
しかし、このセミナーでの「琉球王国の後裔としての沖縄」「東アジアの中心位置としての沖縄」の論点は「災害対応拠点」としての「沖縄」とともに重要なことを再度確認できたことは意義深いもの会った。