テーマは2つ。まず、大震災の中で、ICTがどのように役立ったのか、あるいは期待した効果が出なかったのはなぜなのか。もう1つは「3.11」以降の新しい日本創りの中で沖縄はどのような役割を果たそうとしているのか。
安否確認や食料や医師、看護士、介護士の救援要請などにはフェースブックやツイッターが役立った、被災地では携帯は基地局のバッテリーが切れて通信できなくなった、停電時間が想定より長くなったのでデータセンターも自家発電能力いっぱいになって現在の方式は見直さざるを得なくなった、などの一般的な教訓とともに、原子力発電が、今後、長期的に安定的な運転ができるか、懸念材料になった、ということを指摘し、情報通信の国内再配置、グローバル分散、テレワークの大幅な導入などの仕事のスタイルの変化などが意識されるようになったことを解説した。
情報通信インフラの再配置、再編成の観点から、がぜん、沖縄の存在が再認識されている。かつて、新潟地震、福岡西部地震などの被災時期に沖縄にバックアップ拠点、DR(ディザスターリカバリー)の拠点を置く企業が増加した。今回は、沖縄が日本のはるか西南のはずれにあるので「同時被災」の恐れがない、という従来の理由のほかに、原発がないという特色も浮かび上がってきた。原発のトラブルが生じると、20キロ、30キロの範囲では長期間の立ち入り禁止になる、もっと遠距離までリスクがあるとなると、原発のない沖縄は国内では魅力がある。
さらに自然エネルギーの開発が進展して、コストが大幅に下がれば、化石資源のない沖縄の電力事情には大きなプラスである。自然エネルギーによる「エコ・データセンター」という新しいコンセプトで安いデータセンターの建設、運用が可能になる。
テレワークでは、オフィスに通わなくても仕事ができる新しいワークスタイルが実現すれば、何も首都圏、近畿圏に住むことはない。花粉症のない沖縄で、ストレスから解放される新しい生活スタイルを求めて、沖縄への移住者が増加するに違いない。これらの移住者が能力を発揮できる産業を興すことが課題である。
急進展するアジアへのゲートウェーとしての機能は今後ますます強化されるが、災害国日本をバックアップする沖縄のICT産業の役割も忘れてはいけない。