多数の名士の皆さんの前のスピーチだったので、柄にもなく緊張した。中学時代の同級生や団塊の世代の飲み仲間、日本経済新聞時代の先輩記者と、知人も多かった。美ら島沖縄大使でもあり、沖縄ファンクラブの重鎮、矢野弾氏も、世田谷ロータリークラブからのゲストとして出席していた。
30分ほどの時間だったので、話の内容はコンパクトにした。沖縄が観光と並ぶ産業の柱の一つにIT産業を選び、どのような施策を展開しているか。IT産業にとって沖縄に進出する利点は何か。
もちろん、 ①豊富で相対的に賃金の安い労働力(コールセンター、テスト、開発) ②DR(内地の主要都市と同時被災しない) ③温暖で暮らしやすい(花粉症がない、原発がない)④英語・中国語のできる人材 ホスピタリティ⑤急成長の東アジアの中心(グローバルDC、GIX)⑥ 沖縄戦・米軍駐留補償の助成策による低料金のDC~~などだが、特に、かつては国内主要都市と大きく離れている点がデメリットだったが、大震災以降、BCP(事業継続)の観点から、DR拠点として注目されていることを解説した。
さらにリーマンショック以降は、にわかに顕在化した東アジアの中心に近い地理的特性から、日本産業界のアジア展開の最西端の日本の拠点として大きな意義が生まれている。航空便では東京から出発するのに比べて、往復で5時間は短縮できる。アジア事業本部を沖縄に置くか、あるいはその分室を置くだけでも大きなメリットがあるだろう。何よりも日本の法律が通じ、生活がしやすい点で、配置の志願者もたくさん出るだろう。
もう一つ、そうした沖縄の価値を高めるためには、道州制で沖縄を独立した地域として「琉球州」を新設すべきだ。沖縄資本の航空会社を創設してアジアの各地を低料金で飛び回れる制度を確立する。もちろん那覇空港はハブ空港として機能する。歴史的に見れば沖縄は琉球王国として独立国で、自由にアジア各地と交易して、まさに海上のハブ国家として歴史に名を残している。
アジアが大きく成長して世界の経済地図が大きく塗り替わる中で、日本企業は、改めて沖縄に視座をおく新しい事業戦略を考えるべきではないだろうか。