アジアの玄関~~IT・情報拠点としての沖縄~~

アジアの玄関~~IT・情報拠点としての沖縄~~

 証券業界の幹部の方々に向けたセミナーだった。現在、基地問題をめぐって政治的には混迷を続ける沖縄の現実はいかなるものか。特に産業としての可能性はどうなのか。沖縄はどちらに向かって進もうとしているのか。参加者の関心はこういったところにあった。

 現実をいえば、沖縄は伝統的な農水産業のほかに、復帰から21世紀の今日にいたるまでに2本の大きな産業の柱を育てつつある。一つは観光産業である。1972年の本土復帰後にまず力を入れたのが、青い空、青い海の魅力を訴えた観光客の誘致だった。同時多発テロや新型インフルエンザ、東日本大震災・福島原発事故などの影響で落ち込む時期はあったが、概ね、順調に来県数を増やして年間約600万人とハワイの来島人数に近づく規模に達している。

 続いて21世紀に入って力を入れ始めたのがIT関連の産業誘致である。産業振興策として各種の特典を準備し、また、観光地の沖縄の魅力が後押しして、着々と誘致企業の数は増加している。10年強の間におよそ230社が沖縄に事業所を開設した。ソフトウェア開発拠点、データセンター、コールセンター、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の拠点として事業を拡大している。最も大きな規模になっているのはコールセンターで進出した企業で、その後、BPO拠点、携帯電話のテストセンターなどに事業を拡大して、現在では従業員3000人規模に達しようとしている。

 その他の各社も最初は10数人の小規模で開始した事業が数年間で100人を超える事業に発展しているケースが多い。

 当初、沖縄に進出する企業が注目していたのは、①豊富で相対的に賃金の安い労働力や ②沖縄戦・米軍駐留補償・普天間問題などで各種の助成措置が手厚い――というところだったが、内地に大地震が増えてきたことから、③内地の主要都市と同時被災しない特色から、DR・BCP(事業継続)拠点としてデータセンターやコールセンター、BPOセンターの進出が増えた。沖縄来訪経験がある社員たちを中心に、④温暖で暮らしやすい(花粉症がない、原発がない)ことが評価を受け、さらに、日本企業のアジア地域への事業展開が拡大してくると、⑤英語・中国語のできる人材が比較的多い、情報ネットワークのセンターとして、急成長中の東アジアの中心に近い利点から⑥グローバルデータセンターの基地としても注目され始めている。中国の治安や情報保護に懸念をもつグローバル企業も中国やアジア向けのセンターを沖縄に開設する動きも
出始めている。

 2012年度から、次期沖縄振興10か年計画がスタートすると予想されるが、その際には一段と、日本企業がアジアに向けて進出する最西端の事業拠点として、重要なポジションを占めることになるだろう。

 特に、道州制が実現すれば、沖縄は単独の州として自立し新たな「琉球州」として生まれ変わるだろう。格安航空会社を運航して、東アジアのビジネスマンや観光客の移動のハブになり、超高速ケーブルを多数のアジア主要地域と直結させることで、インターネットの主要中継点として地勢的な特色を生かすことになるだろう。

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