元気のよい中堅のソフトウェアパッケージベンダーで組織するMIJS(メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム=内野幸弘代表)が沖縄で「アジアに向けた沖縄の優位性」を検討しようと開催したフォーラムである。サイボウズ、ソフトブレーン、インフォテリア、エイジア、ウィングアークなど一部上場企業から新興市場の上場企業が主力のメンバーである組織だ。筆者は、ソフトブレーンの創業者、宋文洲氏がリードして発足した最初の時期から、注目していた。そのメンバーとは、MM総研発行の「M&D Reports」の対談のコーナーで連続して掲載した記憶がある。
そのMIJSが沖縄でフォーラムと産業施設を視察するというので、筆者も喜んで基調講演を引き受けた。琉球王国として独立していた時代から島津支配、明・清王朝との朝貢貿易(冊封貿易)、明治期の琉球処分と日本への帰属、そして第二次大戦での陸上戦の悲劇、米軍統治下の時代、そして本土復帰という歴史をまず紹介した。現在の沖縄を知る上での最低限の知識である。
その上で、2002年から始まった沖縄振興10か年計画、その中でITを将来の産業の軸に据えた施策とその大成功。ただし、これは首都圏、近畿圏から遠く離れた日本の「最果ての地域」として賃金が安い、土地代が安いというような利点を生かしたものだった。しかし、リーマンショック後、欧米の経済が衰退し、中国をはじめとしたアジア地域の経済力の急成長に直面して状況が大きく変わりつつある。
日本の産業界も今後の重点市場としてアジアに目を向けて、「労働力供給国」から「購買市場」として接近することになった。こうしてみると、沖縄は日本の辺地ではなく、世界経済の成長力の源泉であるアジアの中心に最も近い「日本の玄関口」という位置へと転回した。これは沖縄が日本社会、日本産業界にとって、極めて重要な役割を果たすべき位置に来た、ということだ。もちろん、情報ネットワークの観点からも、沖縄を重要な拠点にして新しい日本の情報戦略を組むべき時が近いうちに到来するだろう。
中国やベトナム、タイ、フィリピン、インドネシ、シンガポール、マレーシアなど、アジア向けのSaaSの拠点として沖縄のデータセンターが重要な役割を果たす日も近いのではないか。MIJSのメンバーにとって、沖縄は十分に価値ある地域である。