東日本大震災とそれに引き続く電力不足をきっかけに注目を浴びている沖縄のデータセンターへの県外企業誘致のセミナーである。60人収容の会議室だったが、70人近くの参加者で、県内企業からの参加者もいたが、大半は、自前の交通費を負担しての県外企業の参加者だった。
今回は、24年度から沖縄県が本格的に取り組む予定の「沖縄全土クラウドセンター」構想を紹介しつつ、沖縄のメリットを説明した。特にIT拠点としての沖縄は、ここ数年で10年前のIT企業誘致を始めたころとは根本的に意味が変わった点を強調した。10年前は沖縄のメリットは「日本の辺境」であること。東京、大阪と遠いために大災害を同時に受けないことが売り物だった。しかし、アジア経済の急成長と共に、いまや沖縄は東アジアの中央にあることがメリットとして価値を持ち始めた。
日本産業界から見ると「アジアに開いた日本の情報拠点」と変わった。東アジア情報ネットワークのハブの位置にあって、情報保護のルールが厳格で、日本の制度が通じる「安全・安心な情報拠点」である。アジアに向けた日本企業がアジアに開いたドアとしてビジネス展開の最前線の事業所として有利なだけでなく、アジアで事業展開する欧米企業にとっても、また、アジアの有力企業にとっても東アジア全体をにらむ重要事業拠点としての可能性を秘めている。そうした性格をもつ事例が徐々に増えつつある。
ただ、課題はある。データセンター、クラウド拠点として機能を果たすためには、もっと高速通信回線を拡充させる必要がある。県外と沖縄はすでに海底ケーブルで結ばれてインターネットの基盤ができているが、さらに沖縄と香港を直接に結んで、沖縄に東京と並ぶGIX(グローバル・インターネット・エクスチェンジ)にしようという「沖縄GIX」が動き出しているが、これからの大量データ伝送時代に備えるにしては、まだ速度(容量)が不足している。さらに中国、台湾、フィリピン、インドネシアへの高速回線建設も急務である。中国は規制が厳しいのですぐには難しいが、高速化と規制緩和のための政府の外交交渉努力を要請してゆきたい。また、沖縄〜国内県外各地、沖縄県内の回線速度向上も課題である。
沖縄はアジアに向けた情報ネットワークの玄関口として、日本産業界のアジアシフトを支える基盤になって行くことは確実である。