電力とイノーべション、雇用

電力とイノーべション、雇用

パネリスト:村上憲郎(国際大学教授・元グーグルジャパン社長)
      高橋秀明(慶應大学特任教授・元富士ゼロックス副社長)
      藤代裕之(NTTレゾナント新規ビジネス開発担当)
司会   :中島 洋(国際大学教授)

 FTMはFuture Technology Managementの頭文字である。日本の産業競争力の著しい低下の原因は国家や企業の技術力の低下、あるいは、良い技術があるにもかかわらずその商品化やサービス化への経営力に問題があるのではないか、という問題意識で、国際大学のグローバルコミュニケーションセンター(グローコム)で研究会が持たれている。

 2011年度は、インターネット、情報通信技術では大きく米国に水をあけられ、情報通信機器、では韓国、台湾、中国に差をつけられて、主戦場を新たな領域に見出す必要がある、ということで、視点をエネルギーに移した。3月11日の大地震、巨大津波による衝撃と日本社会の継続のために根本的に作り直しが必要だという認識。そして福島原発事故、相次ぐ原発の定期点検と再稼働延期に伴う電力不足に直面して、日本のエネルギー政策も根本的に修整を迫られた。

 なぜ、原子力が必要かという議論はもう必要はない。重要なのは、これまで見逃してきたさまざまな国内エネルギー資源に目を向けることである。地熱発電は世界で第3位の保有にもかかわらず、利用は後発である。しかも、米国、インドネシアなどの先進国に発電技術を供与しているのは日本のメーカーである。日本社会は、技術を保有するのに、政策的に地熱を開発せずに進展を止めていたに過ぎない。太陽光、太陽熱、風力、潮力、地中熱など、多様なエネルギー源が眠っている。「資源のない国」というのは誤った認識である。

 この呪縛を解いて、世界的に原子力から再生エネルギーへと転換を図る世界のエネルギー市場に向けて日本の技術を発展させるのが日本復活の一つの大きな道である。

 特にエネルギー効率は直流の方が優位のようである。スマートホーム、電気自動車などの新しい直流社会を構想するのが1つの目標である。従来、交流で築き上げてきた日本の電力インフラを直流に変更するビジョンを掲げてエネルギー革命を進めることに日本の活路がある。このテーマを掲げて、グローコムは村上憲郎議長の下で、FMT研究会を12年度も積極的に進展させてゆく。一緒に研究を進める企業を求める、というところで討論会は終わった。

最近の講演

中島情報文化研究所 > 講演情報 > 電力とイノーべション、雇用