中島 洋(MM総研所長)
今泉 正義(NTTファシリティーズ取締役 営業本部 副本部長)
宮西 真司(ニッセイ情報テクノロジー パートナー推進部長)
主催:企業IT協会
実施日:2012年6月18日
場所:東京・芝公園 能率協会ビル
企業IT協会では、グループCIO懇談会という研究会を開催している。大手企業グループでは、情報システム部門を共通化して専門会社を運営し、そのトップは事実上のグループ全体のCIO的な責任を負っている。そのポジションに共通の問題意識や課題があって、情報共有、情報交換してその業務の質を高められるといことで、7年前から20社程度のグループCIOが集まって活動を続けている。
IT人材育成の問題などの毎年の課題のほかにその時々の話題のテーマについて議論しているが、第7期の今年は、BCP(事業継続計画)もそのテーマとなった。もちろん、東日本大震災、それに引き続く電力不足の中でどのように企業は情報インフラを守り、業務を維持してゆくか、検討することになったのである。
今泉取締役はデータセンター建設のコンサルティングを多数手がけた立場から「これからのBCP ~ファシリティ対策の視点~」と題して、迫りくる東海、南海大地震などの災害から情報施設を守る手段や考え方を紹介し、宮西推進部長は「仮想クライアントシステムの構築~社員1万人が利用するデスクトップクラウドの活用~」と題して、クラウドで情報を処理、保管して、ネットワークを通じてどこからでもシンクライアントでその情報にアクセスする手法を紹介した。
総括として、進行役の中島は、「BCPは個々の情報施設を災害からダメージを受けないように頑丈にするだけでなく、被災しても別のところで同じ機能を動かして事業の断絶を最小限にする努力で、現在ではクラウドを利用するのが最も有効な道具だと認識が広まっているが、これと似た経営手法としてリスク管理がある。ただ、リスク管理は、リスクに直面した際に経営を最適化することを目的として、必ずしもBCPとイコールではない。現代では、どの事業も情報システムの基盤、支援がなくては成立しない。そこで、大災害などに直面した際に、普段やりたくてもできないことを断行する、という決断をし、従来、事業を中止したいと思っていてもなかなか担当者を説得できなかったものなどを、情報システムの復旧順位を落として廃止に追い込む、などもリスク管理である。事業継続、復活、復旧への最適パスを実践することはBCPの役割だが、リスク管理では、復旧、復活すべきものと、あえて復活させないものとを区別して経営の刷新を図るアイデアもある。大災害は、生き残りのためのBCPとともに、企業体質刷新の絶好の機会である、という視点も忘れないでもらいたい」としめくくった。