仲井眞 弘多(沖縄県知事)
山根 一眞(ノンフィクション作家)
中島 洋(MM総研所長)
北村 倫夫(北海道大学大学院客員教授)
平良 敏昭(沖縄県商工労働部長)
主催:沖縄県
実施日:2012年7月19日
場所:東京・九段 ホテル・エドモント
沖縄県への企業誘致セミナーである。司会進行役がまず、この4月に始まった新沖縄振興10か年計画の中からIT企業の進出に際しての優遇措置について述べ、さらに東アジアの中心に位置していて、日本企業がアジアに向けた事業展開に際して沖縄が有利な点を説明し、また3年前に始まった全日空の24時間運航、那覇空港の物流センターサービスの現況を全日空の担当者が説明した。
その後、ノンフィクション作家の山根一眞氏と仲井眞知事とのトークセッションで、「私の仕事は基地問題だけではない」と会場の笑いを誘いながら、山根氏が知事から沖縄の魅力をひき出した。
本番のパネル討論は、山根氏の進行で、沖縄県の新振興計画作りを担当した関係者の討論となった。仲井眞知事と山根氏とのトークセッションでは内容だったが、北村氏は沖縄の製造業の可能性について意見を述べ、筆者の中島がIT分野の可能性を分担、平良部長は全般的な補足を行うことになった。
ところが、実際の場では、ITについては司会進行役から沖縄の長所や優遇策についてかなり詳細な説明があったので、中島は、司会進行役が触れなかった点について述べた。その中心は沖縄の歴史である。
仲井眞知事が山根氏とのトークの中で「沖縄の固有の歴史も特色だ」と一言述べたので、1870年代まで続いた琉球王朝の時代には海洋を縦横に船で往来し、東アジアの物資や文化を交流させるセンターの役割を果たしたこと、それが日本に帰属したために国境ができ、東アジアとの交流が制限され、その後、台湾と朝鮮は回復したものの、1945年に米国の統治下に入り、再び、アジアとの交流どころか、日本との交流まで制限された歴史をかいつまんで解説した。40年前の沖縄返還までは日本国民はこうした沖縄の歴史を知らずにいたし、今日も理解したと言えない。
敢えて言えば、沖縄が東アジアの中心近くに位置していることが日本の政府、産業界も忘れている。そのため、アジアが急速に経済成長し、日本産業界のアジアシフトが始まった今こそ、沖縄を日本の産業界の次代の発展のジャンプ台にできるし、そのインフラとしての情報センター構築が、日本の経済、産業界にとって大きな意味を持つ。
この発言には、終了後の懇親会の場で、多くの出席者から「沖縄の意味がよく分かった」と声をかけられた。