中島 洋(全国ソフトウェア協同組合連合会会長)
主催:全国ソフトウェア協同組合連合会
実施日:2012年9月12日
場所:東京・大崎 株式会社コムチュア本社
毎年、9月に開催している全国ソフトウェア協同組合連合会主催のセミナーの冒頭での挨拶とスピーチである。一昨年から「クラウド」をテーマにして来て、今年は「研究」の段階を過ぎて、中堅、中小のソフトウェア会社としてどのようにクラウドを活用するのか、という具体的なテーマに取り組んだ。企画委員会で「クラウド2.0」と名付けたので、講演題名はそのままにしたが、筆者は「現段階はクラウドの第3段階に入っていると理解しているので、クラウド2.0についての定義は他の方にお任せする」と話を起こした。
クラウドの第1段階は、そのように名前を付けていたわけではないが、インターネットの中に情報資源を置いてサービスが始まった時期だ。アマゾンやセールスフォース、さらにグーグルなどがこうしたサービスを始めた。グーグルのGメールやオフィスソフトの提供、アマゾンのAWSによる開発環境の提供、セールスフォースの各種アプリケーションのWebでの提供がこれで、ソフトウェアやストレージなどの情報資源の共用が最大の特色だった。第2段階に特定企業向けの「プライベートクラウド」が登場すると、「パブリッククラウド」と呼ばれるようになった。
第2段階はプライベートクラウドの登場で、クラウドの意味は不特定多数のユーザーの情報資源の共用という性格を離れて、その技術である「サーバー仮想化」や「所有から利用への移行(アウトソーシング)など、インターネット技術を活用した手法の視点が強調されて進化を続けた。こうした変化はわずか2年位で訪れてきていて、変化は急である。
そして、パブリッククラウドが充実して、個人向け、企業向けの多様なクラウドサービスがインターネット上で利用しやすい形でメニュー化されてくると、第3段階に突入した。ユーザーがクラウドを利用するだけでなく、ソフトウェア会社が、クラウドをサービス基盤として利用できる段階に来た。提供されているクラウドサービスを組み合わせて、ユーザー企業が求めるシステムとして構築してあげるというインテグレーションサービスが可能になった。自社の特色あるソフトウェアをSaaSサービスとして提供し、最終ユーザーだけでなく、インテグレーターにも部品として利用してもらえる環境の出現でもある。
新しいサービス基盤の特色は、インターネットを通じて「多様なハードや多様なOSを遠隔から利用できる」、「柔軟な時間設定や機能、必要に合わせた柔軟な料金」などで、ソフトウェア産業にとっては新しいビジネス環境の出現である。