「情報ビジネスの第2のビッグバン~そこまで来たスマート革命~」
中島 洋(全国ソフトウェア協同組合連合会会長)
主催:HISCO(ハイテクノロジーソフトウェア開発協同組合)
実施日:2012年11月29日
場所:大阪商工会議所・会議室
全国ソフトウェア協同組合連合会の主力メンバーであるHISCO主催の「IT経営革新セミナー」に講師として依頼された。場所が大阪で、スケジュールがタイトだったが、連合会の専務理事を務める小幡氏が代表理事を務める組合のイベントだったので、東京での各種会議には欠席させてもらって講師を引き受けた。テーマはITとエネルギー(電力)の融合である「スマート革命」はどのように進行するか、ということで、筆者にはストライクゾーンのど真ん中だった。講師の一人には元グーグル日本の社長だった村上憲郎氏に依頼した。
「スマート」には「スマートホン」のように、「賢い」という意味もあるし、ICTを効果的に利用して生活の質の向上や福祉の充実、安全・安心の確保、良質な教育などを実現する「スマートタウン」や「スマートハウス」などを意味することもある、など、多義的だが、ここでいう「スマート」は「スマートグリッド」「スマートメーター」などに使われる「電力の効率的な運用」という意味である。
実は、この段階では「ITと電力の融合」(というのが言い過ぎならばITと電力の「連携」)が実現することを想定している。
WEB段階説でいえば、「WEB4.0」と名付ける段階だ。インターネットは「行政(A=アドミニ)」「企業(B=ビジネス)」「個人(C=顧客、市民、従業員)」がインターネットを通じて手続きや業務を行う「電子行政」(A2B、A2C、A2A)、インターネット通販や受発注を行う「電子取引」(B2B、B2C)などで利用が始まった。つまり、行政、企業、個人がインターネットを介して関係をもった。
次に、個人が検索エンジンにアクセスしたり、本を購入するといった行為を集計して「レコメンデ―ション」や「ランキング作成」を行って、個人のインターネットに対するアクセスが他の人の行動に影響を与えるという機能を持ち始めた。「人」と「人」が強い関係を築く新しい段階に入った。これをWEB2.0と呼んだが、2.0は、さらに人と人のTwitterやフェースブック、Mixi、GreeなどのSNSに発展して、「C2C2C・・・」という構造を築きだした。
ではWEB3.0は何か。これは機械と機械がインターネットを通じて関係をもつ段階である。M2Mとも呼ばれるが、せっかくABCと来たので、筆者は、「D」を使って機械ではなくDevice (装置、機能部品)と呼んでいる。農産物や商品着けたタグによって流通経路や所在を追跡できる「トレーサビリティシステム」や自動車に搭載したカーナビとでセンシングした走行情報や位置情報を集積して、渋滞道路や通行止めの道路を簡単に割り出す交通システムなど、実際のD2Dの事例が出てきている。家電製品に同様のタグをつけて、盗難になった時にも所在が瞬時につかめる、リコールにつながる重大な欠陥があったら、所在を特定して全量回収する。これがD2Dで、新たにモノとモノがインターネットで強い関係に入る。これがWEB3.0だ。
いま、さらに新しい段階に入った。各家電や電気を使用する機械やモノにスマートメーターをつけて電力使用量をリアルタイムに計測する。一方、これから無数の再生エネルギー発電装置や蓄電池が登場するが、その発電状況や蓄電状況を計測する。電力の生成や消費の状況をモニターして最適な供給を行うことで新たにできる超分散のエネルギー生産消費ネットワークを、インターネットがコントロールする。D2Dの先にインターネットでエネルギーが制御される新しい関係が生まれる。これはWEB4.0と言える段階ではないか。これが新しい膨大なIT開発需要を生み出す。
新しいビッグバンが始まる。