「緊急課題!! ~データセンターのBCPにどう取組むか~」
中島 洋(MM総研所長)
主催:Future Facilities(日本法人)
実施日:2012年12月5日
場所:東京国際会議場
社会の重要インフラとしてデータセンターの重要性がどんどん大きくなっている。それとともに、データセンターの事業継続性の確保は極めて緊急で重要な課題に浮上してきている。しかも、そのリスク項目も急速に増加している。Future Facilitiesはデータセンターの電力を低減させ、運営を効率化するソフトウェアを提供するイギリスのコンサルティング会社で、日本の情報システム運営管理者を集めた年次セミナーで講演した。
筆者は、総務省系のデータセンター促進協議会(村井純会長)の副会長で、クラウド国際戦略委員会の委員長も仰せつかっている。その委員会での議論の成果をベースに講演した。
このセミナーで挙げたリスク項目は
・大震災、火山大噴火に伴うリスク
・津波、洪水による施設の破壊
・原子力発電所の事故による立入り制限
・テロ(爆弾・ミサイル攻撃など)による施設の破壊
・人為的ミスによるシステム停止
・パンデミック時のオフィス従業員の確保の困難
・サイバーアタックによるシステムの混乱
・海外政府によるデータ盗聴、法に基づく接収
などである。特に首都圏に72%のデータセンターが集中している現状は社会的リスクが極大化していることを警告した。個々のデータセンター事業者は、ユーザーが、近場のセンターを希望するので、仕方がない、と「自社の最適」を追求するのだが、「自社の最適」を集合すると全体最適、つまり「社会の最適」から遠く乖離してしまう。
「部分最適の総和は全体最適にならない」という合成の誤謬の典型的な事象だ。個々の事業者は自社の利益の最適化を求めるので、企業の合理性に任せると、首都圏集中はさらに進行する危険がある。
これを是正するには、やはり、公的措置が必要である。個々の事業者に遠隔地にバックアップのセンターを作るように誘導するのは難しいので、すでに地方で事業をしているデータセンターとシステム連携させるように誘導するのが解決策であろう。システム連携することによって企業経営やビジネス、公共機関にとって重要な基幹データの安全な保管が可能になるし、首都圏のシステムが止まっても、その他の地域のデータセンターのバックアップによってシステムの停止を短時間で済ませる。
その地方のセンターは既存のものを連携の輪に入れるのはもちろんだが、新たに共同センターを設けるように政策的に誘導すべきだろう。税制、保険などで優遇措置をとるのはもちろんだが、社会的リスクを回避するためなので、補助金などで、緊急体制の構築を加速させるようにしなければならない。首都圏を襲う大地震や富士山の大噴火などによるシステム停止を最小限にするために、この施策は緊急を要する。