■ 中島 洋(MM総研所長)
■ 主催: MCPC(モバイル・コンピューティング推進コンソーシアム)
■ 実施日:2012年11月22日
■ 場所:東京・青山TEPIA
今から思うと、このMCPCは未来を先取りした団体だった。幹事長・事務局長である畑口 昌洋さんとは、同氏の前職時代からの知り合いで、エネルギッシュな行動力に感服してきたが、その依頼を受けて、筆者はMCPCのセミナーでは、2度目の講演をした。
前回は6、7年前になると思うが、Web2.0が注目されている時期だったので、未来志向のこのコンソーシアムでは、「Web3.0時代」の展望を述べた。それは、Web2.0を「インターネットを通じて人と人の相互作用、相互関係が価値をもつ時代」と認識した上で、Web3.0は「インターネットを通じてモノとモノの相互作用、相互関係が価値をもつ時代」と位置付けた。その予想は、ほぼ的中した、と思っている。実際、MCPCの最近のテーマはM2M、つまり、「インターネットを通じて起こす機械と機械の相互作用」とシステムの開発へと向かっている。
そこで、今回は「Web4.0」への道を展望してみた。
Web発展の「中島理論」はA~B~C~D主体論である。インターネットを利用する主体、つまり、インターネットにつながる主体の分析と、その発展から予測している。Aは行政(administration)、Bは企業(Business)、Cは個人(consumer=消費者、citizen=市民)、Dは装置・機械(device)である。ネット販売はB2C、企業同士の電子取引はB2B、電子行政はA2C、A2Bで、インターネットを通じてA、B、Cがつながった。これが第一段階のインターネット利用、つまりWeb1.0の浸透である。
次の段階は、個人(C)がいかにインターネットで活動したか、という履歴の集合が他の個人(C)に影響を与える新しい意味を持つ時代、Web2.0の時代だった。だれがどういう本を買ったかという事が他の人間に関心がありそうな本を推薦する、あるいは、どういうキーワードを検索したか、どのサイトにアクセスしたか、というデータの集積が他のユーザーがアクセスしたときに表示する優先順位を決めて、他の個人が情報を選択する際の動機づけをする。さらに、人の発言が多数の人に伝わって、それが複雑に、多重に、波紋となって広がる、などC2C、あるいはC2C2C2C・・・と「C」の関係性が価値を持つ時代になってきた。現在がその真っ只中である。
そして次の段階はいよいよ「D」である。コンピューター能力の急速な拡大で、コンピューターが部品となって、さらに、通信能力の向上と料金の限りなき低廉化で、部品と部品、装置と装置、センサーとセンサーなどがインターネットを通じてデータを交換、蓄積してビッグデータとなって、これを自動解析することによって、機械の知識化が進展する。これが現在、見え始めてきたM2Mの世界、IOT(インターネット・オブ・シングス)の世界である。Web3.0が実現しつつある。
さらにインターネットは電気・電力・エネルギーの制御を通じて新しい顔を見せ始める。インターネットの新しい主体としてE(electric、energy)が登場しつつある。当面、電力とインターネットの融合がテーマになる。「スマート××」という形で数多くの提案がなされてきたが、まだ、イメージはあいまいだが、近いうちに、いろいろなアングルから明確なビジョンの提案が出てくるだろう。インターネットはABCDEの5つの主体が活動する舞台になる。