「スマホの近未来」という形で、日本と韓国のベンダーに製品計画を発表させるというのが主催者の狙いだったようだが、韓国はLGエレクトロニクスの張容碩経営戦略担当常務が引き受けたものの、日本のスマホメーカーは受ける企業がなかった。そこで日本のベンダーに割り当てられた時間を「日本のスマホ利用の近未来」というテーマで筆者が引き受けた。
張常務がLTEを利用して高速化するスマホの次期機種の紹介、画像をさらに鮮明にして、ゲームやエンターテイメントの分野の発展をさらに促すというプレゼンだったので、筆者は、ビジネス領域でスマホやスマートタブレット端末が引き起こす業務革命に焦点を絞って話をした。BPIAの狙いであるビジネス プロセス リエンジニアリングの一部である。テレワークという業務スタイルの革命、「ノマド」というフリーオフィス+多数の契約先とのコラボレーションという勤務スタイルの革命、それに伴う企業内業務の外部への切り出し、大幅な組織再編成、こうしたもろもろの変化についての展望を明らかにした。
テレワーク、在宅勤務などの可能性はかなり以前から主張されていた。ネットワーク社会の象徴的な風景だった。しかし、「会社人間」の多い日本社会では、会社に集まって顔を合わせることが「仕事」で、満員電車に揺られながら遠距離通勤し、深夜近くまで会社仲間と過ごす生活習慣を変えられなかった。ソフトウェア開発や営業職で一部、広がった程度である。
その状況に終止符を打ったのが、昨年の福島原発事故である。突然、首都圏が電力不足に見舞われた。夏には大幅な節電を強いられた。エネルギーを消費しながら遠距離通勤をし、オフィスに集まって電力を食う冷房装置を運転するのは無駄である、という認識が広がった。セキュリティを強化した情報システムに改善し、家庭や出先から各種の情報端末をネットワーク経由で会社のサーバーにアクセスする。オフィスでの業務と同等の業務をオフィスの外で行い、オフィスでの業務を削減する。経理や人事など管理部門まで、テレワークが幅広く広がった。
もちろん、会社で作業を行わないなら、情報システムも自社で所有することはない。SaaSやデータセンターを利用するように情報システムの再編成が行なわれている。情報システムのアウトソーシングである。さらに一歩進んで業務そのものを専門業者にアウトソーシングするBPOも視野に入ってきた。この動きにさらに拍車をかけたのが、端末の進化だ。パソコンに限らず、スマートタブレットやスマートフォンの機能強化が進んだため、クラウド型の情報システムの再構築が進みつつある。インターネットを通じてスマート端末でオフィスの外で仕事をする。電力不足がこの勤務スタイルを強制したのだが、やってみると、そう問題はない。電力不足がなくても、テレワークでやっても良いのではないか。新しい勤務スタイルが見えつつある。これに伴って、ビジネス・プロセス・リエンジニアリングも進行することにある。