進化する企業のしくみ
2007年09月30日
鈴木貴博+宇治則孝著
800円+税
PHP研究所、2007年10月10日発行
共著者の一人、宇治則孝氏は長くNTTデータで法人向けビジネスのリーダーだったがこの6月に常務を最後にNTT持ち株会社の副社長に移動した経営トップである。まだ、発行日以前だが、完成したばかりの著書を直接に寄贈いただいたので、さっそく書評の欄に取り上げてみた。
まさしく、情報通信技術が巻き起こしている企業最前線の話題を的確に取り上げ、これから起こるであろう変革の予兆を議論している。グーグルの「検索エンジン」がここまでインターネット社会の中心になるとは想定していなかったが、その示す変化の方向をサービス指向アーキテクチュア(SOA)という観点から取り上げ、Web2.0のキーワードで象徴される現象で広がった消費者主権の新しい世界のスケッチ、企業同士の新しい連携、社員同士がつながって形成する企業内集合知などを考察している。
情報通信の仕組みを高度に提供しながら、企業経営の改革を目指してきた宇治氏の経験や考え方が、一方で、コンサルタントとして活動してきた鈴木氏の経験とぶつかりながらさらに深まっている。
新書版の読みやすい体裁で、本来なら難しい話を実例に基づきながら理解しやすい記述で議論が展開している。次々と出現する新しい用語を長い経験に裏打ちされた落ち着いた着眼で解説してくれているので、納得させられるところ多々である。