バカ社長論
山田 咲道(公認会計士・税理士)著
850円+消費税
日本経済新聞出版社、2008年5月発売
「経費節減」と部下に号令する社長が、経費節減のために行っている施策がかえって多額の無駄を生む――周辺でいかにもありがちな事例を多数、描写しながら、モノの考え方を修整してゆく。そのキーワードが「バカ社長」である。
電気代を節約しろ、オフィスで使用する紙代を節約しろ、と運動を展開して、社員の無駄な行動を増やして、結局は人件費を膨らませ、また、仕事の能率を低下させて売り上げを減らすという重大な結果を招く。つまり、経費節減運動を展開することによって収益を圧迫し、赤字を広げる。企業の収益が圧迫され
ている時期だからこそ、バカ社長は必死になって経費節減運動を提唱しているのだが、結果は、収益をさらに悪化させるという反対の方向に動く。
コピー機やパソコンなどの事務機器は新しいものほど効率が良く、生産性が高い。特に事務機器を頻繁に使うオフィスでは、高性能の機種で、短時間で大量処理をして従業員の拘束時間を減らし、機械の使用順番を待つ従業員の無駄を減らす――これが正しい解答である。少し高額な機種でも、従業員の無駄な時間コストを計算すれば、すぐに元を取り戻せる。それに気づかず、利益が上がらないときだから、と、安い低機能機種を選べば、さらにコストが上がって収益は下がる。
こういう事例をたくさん紹介し、バカ社長の「思考と行動が、会社を破壊する」と著者は指摘する。普段から気づいているケースもあるが、改めて、こうした文脈で説明されれば納得が行く。文体も軽く、すんなりと読み進められて、胸のつかえが下りる感じだ。こういうビジネス本では、ソフトブレーンの創業者でBPIAにも縁が深い宋文洲さんの著作が痛快だが、本書もそれに並ぶ軽快な経営書である。
普段の自分の行動を点検するためにも、一度、目を通すことをお勧めする。