編集長が推す「このセミナー」
俊敏経営のためのIT戦略
日時:2008年7月25日
場所:東京証券会館
講演:MM総研所長 中島 洋
主催:証券懇話会・労務問題懇談会
中堅証券会社経営トップの勉強会である。労務問題懇談会で「俊敏経営」を語るのはいささか焦点がずれているのではないか、と思ってお引き受けしたが、経営トップにとってはIT戦略そのものが労務問題に直結しているようで、組織の問題として幅広く受け止めてくれたようである。
冒頭は、最近の注目すべき企業の情報システム化の方向である。キーワードは3つある。まず、「意思決定迅速化(ビジネス・インテリジェンス))、次いで「SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」、最後に「環境に優しい情報システム(グリーンIT)」である。
特に重要性が増してきているのは、ビジネス・インテリジェンス。ビジネス・インテリジェンスは経営に必要な情報を社内外から大量に収集してきて意味のあるもの、意味がないものを振り分けて情報加工し、それを簡潔に目に見える形で経営トップや部門責任者に提供するシステムである。経営環境の変化に合わせた企業革新や現場から経営層まで各部署の課題、早期発見と解決、さらに最近の重点事項である内部統制の厳格化に伴う「見える化」の実現も関係してくる。
ただ、ビジネス・インテリジェンスという言葉はなじみにくいだろう。「インテリジェンス」の用法としては「CIA(セントラル・インテリジェンス・エージェンシー=米国中央情報局)」で使う「インテリジェンス」に近いと理解すればよい。米国は国家戦略や戦術を適切に遂行するために多数のCIA工作員が様々な方法で情報収集するだけではなく、偵察衛星を使って、仮想敵国の穀物の生育情報を集めるなど、高度な科学的手段によって膨大な情報を収集し、それを解析して意味のある簡潔な情報にまとめて毎日CIA長官が大統領にブリーフィングしているようである。これがインテリジェンス。
インターネットが発達して、企業は様々な情報を社内、取引先、社会全般から収集することができるようになった。問題は情報の氾濫によって事態の本質が見失われがちだということである。それを分析し、必要な情報を集約して、効果的な見やすい形にまとめて意思決定者に提供する。大統領がCIAによって必要な情報を整理して簡潔に提供されるように、経営トップにもこうした整理された情報を提供する仕組みが重要である。しかも現在の情報通信システムはそれを可能にしている。
内部統制の仕組みが一段落した後は間違いなく、ビジネス・インテリジェンスがシステム投資の焦点になる。