百貨店の情報システム部門幹部の方々の勉強会である。元大手百貨店の情報部門リーダーだったコンサルタントの方が企画し、直接、流通業界に関係した話題や技術はこのコンサルタントと東芝ソリューションの方が引き受け、筆者はもっぱら情報通信システム分野の大きなトレンドを紹介し、分析を行う。
今回の論点は2つ。
経営とITが密接に関係する場所に、IT投資が向かおうとしていることが主題の一つ。『日経情報ストラテジー』誌の今年2月のCIO調査で、「経営者の意思決定支援」のシステムが今後2-3年に重点を置く投資として浮上してきた。過去2-3年の優先順位では17、18番目と、最下位から2、3番だったのが、上位第五位に急上昇したのである。これは複数回答の結果だが、「最も重点を置くIT投資」の項目では、第1位の「内部統制」に次いで堂々と第2位になった。
「経営者の意思決定支援」は、アプリケーション名で呼ぶと「ビジネスインテリジェンス」に相当する。欧米企業の情報投資の調査では、5、6年前から連続してトップの位置にある項目である。日本でもようやく欧米企業並みになってきたということだ。社内外の情報を多角的に収集して、経営トップに直感的
に理解しやすい形に情報を加工して提供する。企業環境を「見える化」する経営トップ向けの仕組みである。経営環境のめまぐるしい変化の中でトップが意思決定を的確に行うための仕組みだ。
もう一つの情報投資の項目は「グリーンIT」である。10月に開催された日経BP社の「ITproECPO」の来場者対象アンケートによると、ITエンジニアが関心をもつキーワードは第1位「仮想化」、2位「グリーン
IT」、3位「SaaS」、第4位が「シンクライアント」である。運用管理の簡素化、システム構築の迅速化とコスト圧縮、セキュリティーへの配慮など、さまざまな効果を含むキーワードだが、共通しているのは、使用エネルギーを削減して、炭酸ガスの排出量を削減する手段としても注目されている。第2位の「グリー
ンIT」は端的に炭酸ガス排出の削減を目標にしている。
米国発の経済混乱の中でシステム投資は慎重姿勢に転換しているが、グリーンITは取り組みやすい項目だ。グリーンITは、即省エネルギーにつながって、コスト削減の効果を生む。また、社会からの深刻な要請に応える社会的責任を果たすものでもある。社会的責任を果たし、同時にコストダウンにつながる。当分、グリーンITの投資は進行しそうである。