2008年11月26日
主催:明治安田システム・テクノロジー
場所:静岡県伊東市日本IBM天城ホームステッド
講師:MM総研代表取締役所長 中島 洋
明治生命と安田生命の両生命保険会社が合併し、システム部門も合併した。しかし、親会社以外のシステムビジネスも手がけているので、そのユーザー企業向けの初めてのシミナーに招かれて、企業の情報システムの今後の方向性について所信を述べた。このセミナーでは、日本IBMの専門家から、クラウドコンピューターなどのレクチャーは済ませてあるので、筆者の役割はもっと目線の遠いところでビジョンを述べることである。
折しも、企業の不祥事が相次いでいたこともあって、「品格ある企業」を中心のテーマにした。品格ある企業の条件は、まず、内部統制がきいた企業のことである。法令を順守するだけでなく、社会が企業に信頼を寄せるように社会の課題を先取りして対応してゆけるようにすることである。
歴史的にみると、企業が社会の信頼を裏切る行為を繰り返してきた。コメ騒動などで、企業の穀物買占め行為が非難されたが、これには、マスコミの誤報道が基になっているという指摘もあるので、論評を避けておくとして、その後の企業批判の原点にもなった、足尾銅山事件を取り上げた。これによって企業の製造活動には厳しい制約がかけられることになった。さらに水俣病(水銀中毒)やイタイイタイ病(カドミウム中毒)などで社会へに被害を広げたことをきかっけに工場排水に規制が厳しくなった。消費者との関係では、ヒ素ミルク事件やPCBが混入した米ぬか油事件などで、生産管理への厳しい要求が制度化された。
今日のIT技術の進展を基本に考えれば、こうした排出物についての規制は、ITによる監視と管理で十分に対応できる。きちんとした投資を行えば可能ならば、企業はそうした規制をクリアしなければ操業してはならない。つまり、品格ある企業になるためにはITのフル活用が不可欠になった。
今日では会社法とSOX法(金融商品取引法)がある。企業活動を阻害するものとして評判が悪い規制だが、最初に評判が悪いのは、他の規制のスタート時と同じである。取り締まられる側が不平を言うのは当たり前で聞く耳を持たない方が良い。しかも、これらの新しいルールは、ITによって企業活動を監視するシステムができれば、難なくクリアできるものである。また、これらの監視システムは同時に業務プロセスを監視して無駄なフローを抽出して効率的な方向に改善するものである。内部統制のためのIT投資はかさむが、その投資は業務変更による収益改善で十分に回収できるはずである。品格ある企業への道は、一見、企業に過酷な要求をする、と反発を受けるが、結果をみると収益を改善するビジネスプロセス革新そのものなのである。