2009年2月3日
主催:内田洋行
場所:仙台市・情報産業プラザ
講師:中島 洋
企業は収益主義に走ると社会との間で強い対立を生みだす。歴史を紐解けば、足尾鉱毒事件に始まって、ヒ素ミルク事件、米ぬか油中毒、水俣病、四日市ぜん息、さらに各企業で起こった産地や製造工程の偽装や不正など、そのたびごとにルールが作られ、そのルールを守るための内部統制が叫ばれてきた。最も新しいのが、会社法による従業員、取引先、株主、地域住民などステークホルダー全般に対する取締役の内部統制義務の規定で、さらに株主に対する義務を強調したのが「日本版SOX法」の内容を盛り込んだ「金融商品取引法」である。こうした規定によって「品格ある企業」作りが企業の課題になっている。
加えて金融危機をきっかけに指摘しなければいけないのが、貪欲資本主義の終焉である。すでに多くの指摘があるように、金融危機の元凶の一つが「金融工学の誤用」である。厳しい指摘の中には、「貪欲」は資本主義そのものが内包しているもので、金融工学によってそれがむき出しに現れた、として金融工学そのものを否定する声もある。
しかし、金融工学はマックス・ウェーバー流にいえば、学問そのものなので本来は価値観から解放されているもので、結局はそれを使う人の品性にかかっているといえるのではないか。すでに金融関係者には「貪欲」についての反省から、そうした暴走を防ぐような「内部統制ルール」の必要、あるいは、内部統制だけではなく、金融制度の根本的な見直しを叫ぶ声も強まっている。間違いなく、金融の観点からも「企業の品格」が当分の焦点になるだろう。
つまり、企業は利益の観点だけでなく、社会への寄与が価値になるとの観点から、財務諸表にこれらの社会責任を企業コストあるいは企業プロフィットして数値化し、織り込んでゆけないか。これが焦点になるだろう。企業が社会的責任を果たす、というのは、利益と別のものではなく、本来は企業活動そのものが社会に価値を提供し、社会に幸福をもたらすものでなくてはならない。企業活動そのものが社会的責任を担ったものである。その企業活動のビジネスプロセスを絶えず改革してゆくことは、情報システムの大きな役割である。