「国民IDの創設で安全・安心・公平で効率的な社会を実現しよう」
2009年3月18日
主催:社会経済生産性本部 情報化推進国民会議
場所:東京・秋葉原UDXセミナー会議室
講師:日本経済団体連合会 電子行政推進委員会共同委員長
富士通(株)取締役相談役 秋草 直之 氏
社会経済生産性本部 情報化推進国民会議委員長
機械システム振興協会会長 児玉 幸治 氏
社会経済生産性本部 情報化推進国民会議専門委員長
MM総研代表 中島 洋 氏
健全で効率的、豊かな情報社会を築くためには、行政の無駄や非効率をなくしてゆくことが大きな条件の一つである。必要な場合には、行政機関でばらばらになっている国民番号に連携を持たせなければならない。社会保険庁で大量に発生している行方不明の年金支払い情報は、住民基本台帳と社会保険番号が連動していれば防げたトラブルである。このトラブルによって年金受給に不安が生じ、国民の老後への不安、政府不信を招き、さらに巨額の事務経費を投入するに至ったことは、行政における国民情報の連携(国民ID)の重要さを強烈に認識させた。
ただ、情報システムによる住民基本台帳ネットワークの創設には、「国民総背番号制」に対する強い拒否反応が生じた。国民全体に不安が広がった、というよりは、一部の反対者によって、深い理解なく世論が引きずられた、というのが実態ではないか。法律の国会通過のために住民基本台帳ネットワークはさまざまな制限が加えられて、行政機関ごとの情報システムの連携がばらばらのままに終わって、本来の住民基本台帳ネットワークのメリットが十分に生かせない状況に陥っている。
出席の論者が等しく指摘したことは、行政機関で利用している個人識別番号を連動させることで、国民の側で手続きの簡略化や行政スピードの向上など、多くのメリットが享受できることだ。情報の正確性も増す。しかし、問題は、行政の情報が「統合」されることによって、国民の個人情報が丸ごと行政府につかまれてプライバシーがなくなる危険はないのか、という根強い不信や不安である。不便でもプライバシーを守った方がましだという声も、数は少なくなったが、大きさは依然として大きい。
こうした不安を払しょくするアイデアとして情報化推進国民会議が今年初めに提言したのが「セクトラルモデル(部門別独立システム)」と呼ぶ手法である。すでにオーストリアで実施されているが、行政機関ごとに国民の個人識別番号がばらばらのままで、連携が必要なら、これを第三者の独立機関が中継して連動するが、この連携情報は暗号化されてそのつど変えられるので、再利用はできず、行政やその他の機関で個人の情報を丸ごと一覧することは、本人以外はできない仕組みである。各行政機関の国民識別番号を統一するのとは違い、安全性が確保できる。また、国民統一番号では、各行政機関の情報システムも変更しなければならないが、セクトラルモデルでは、第三者の独立機関で中継暗号化システムを構築するだけで、行政機関のシステムはそのまま使えるので情報システム構築コストが安く抑えられるメリットがある。
果たして、こうした運動が実り、行政でばらばらの情報を安全でかつ効果的に連動させられるのはいつになるか。