パネル討論「地域の安全・安心のための情報化のあり方」
2009年2月16日
主催:国際社会経済研究所
場所:東京・泉ガーデンコンファレンスセンター
パネリスト:松村寿弘 岩手県紫波町生活部町民課町民窓口室主査
崎村夏彦 OpenIDファウンデーション・ジャパン発起人代表
庄司昌彦 国際大学GLOCOM主任研究員
遊間和子 株式会社国際社会経済研究所主任研究員
コーディネーター 中島洋 MM総研所長
岩手県紫波町は住民基本カードをすでに1万枚、住民に発行している住基カード先進県である。住基カードを提示すれば各種町立施設へ優待入場できるなどの特典を設け、さらにカード発行料も無料にするなどの優遇措置を講じている。その逆に各種証明書の発行はカードで自動発行機を利用してもらうなどの仕組みに切り替えた。職員の業務の効率化による人件費の削減で十分に投資は回収した、と松村寿弘町民窓口室主査はいう。
崎村夏彦氏はOpenIDの推進者。通販やポータルなどさまざまなサイトでIDやパスワードを入力する複雑な手間を簡略するのがOpenIDである。OpenIDに加入しているサイトでどこかIDをとれば、後はこれを利用して他のサイトでのIDを省略できるという仕組みである。住基カードでもこのような仕組みと同様のシステムにして、年金、健康保険、運転免許証、あるいは銀行カードなど、一体化することができるという提案だった。
庄司昌彦主任研究員は欧州での各種カードが統合されている状況を調査しているが、その成果から、日本のカードの統合化の遅れを指摘した。
遊間和子主任研究員は、とりわけオーストリアで実施されているセクトラル・モデルを紹介し、日本ではセクトラル・モデルを参考にしながら制度ごとにばらばらで著しい非効率を招いている個人認証番号を連携し、「国民ID」とすべきであると提言した。セクトラル・モデルは、従来各種の制度で使っている個人識別番号はそのまま使用するのでシステムの変更が少なく、非公表の国民識別番号と各種の制度での識別番号が方程式によって必要な時だけ別々にリンクするようになっている。入力はどこかで1回すれば、後は、個別に全システムと連携できるが、ある人物の情報をそれぞれのシステムから情報を集めて名寄せすることはできない。情報を一元化して管理される危険はここで排除が可能である。
このパネル討論の結論は、連携して管理できて、かつ個人情報が本人以外で一元的に閲覧できることがない、新しい国民番号の仕組みが可能だということである。さらに、この仕組みの実現を望みたい。