「ビッグトレンド ITはどこへ向かうのか」
アスペクト : 2,200円+税
2009年6月4日刊行
著者 田中 辰夫 編著 安延 申、前川 徹
旧通産省の情報産業担当の行政マンだった安延申(現フューチャーアーキテクト社長)、前川徹(現サイバー大学教授、コンピューターソフトウェア協会専務理事)の両氏に慶応義塾大学の田中辰夫准教授が加わって書かれたものである。元行政マンが2人いるので、過去から未来に向かっての情報産業の流れが
スムーズに見えてくる。安延、前川両氏は通産省の出発を、大型コンピューターを扱う立場からスタートし、20年の間にそれがインターネット主導へと変わる激変を経験している。その衝撃的な体験が、本書をまとめる強烈な動機となっている。
前書き(はじめに)に断ってある通りに、本書では「IT」という対象を、コンピューターとその周辺の動きに照準を定めている。広い意味での通信やインターネットビジネス、コンテンツビジネスは必要最小限にとどめて深入りせず、それが却って本書を読みやすいものにしている。ただ、コンピューターの進展から議論を避けられないインターネットの世界、「クラウド」はじっくりと1章をさいて述べられている。
目次を列記すると、この本の目指すところがはっきりする。
序章は、ITは何を変えてきたか。
第1章 計算機の時代からパソコンの時代へ
第2章 オープン化、インターネットの登場と発展
第3章 情報化の長期トレンド
~モジュール化の終焉と統合への回帰~
第4章 SaaSとソフトウェア・ビジネスの未来
第5章 ITの未来を探る
~クラウドコンピューティング~
終章は、ITはどこへ向かうのか
特にわれわれの関心は「未来」にある。ここではクラウドコンピューティングについて詳述している。いろいろな立場から説明っされている「クラウドコンピューティング」をコンピューターの発展史の流れから明快に描いてくれる。また、最後に、自動車やロボット、テレビ、家電製品にソフトウェアが組み込まれて連動して動くことが次の時代の焦点であることを軽く紹介して締めくくって、われわれの時代の行方を示している。