東京・日比谷・帝国ホテル
NTTコミュニケーションズ 有馬 彰副社長
MM総研代表取締役所長 中島 洋
主催 : NTTコミュニケーションズ
毎年開催のNTTコミュニケーションズのフォーラムでの対談。有馬副社長の対談相手をMM総研の中島所長、本メルマガ編集長が務めた。まず、中島が基調スピーチ。IPTVが最先端の情報通信革命の精華であることを強調した。
情報通信革命の中心がコンピューターだった時には、情報機器の革命的進展があった。パソコンの進化、デジタルカメラの進化、レコードからCDへの転換など、劇的な転換である。次に、通信ネットワークの性能向上が加わって、情報革命は予想をはるかに超えた「情報通信革命」へと進化した。その社会変革のスピードはさらに加速しつつある。さらに、その変革の最先端は、「放送と通信の融合」に移った。
実はここには情報通信技術進展の黄金の法則が存在している。情報処理技術が10年で100倍の速度で技術革新が進んでいるのに対し、通信分野は10年で1000倍と速度が一ケタ早く、情報処理技術の成果よりも、通信技術を使った成果が上回る。主役は通信技術に移り、通信インフラが支配的な影響を与える位置に急上昇してきた。日本では、光回線の普及が始まって、ブロードバンドインフラが高速、低廉なインフラとして登場し、状況を一変させつつある。通信インフラの側がコンピューターを飲み込み、テレビ機能を吸収し始めた。放送・通信・コンピューターの融合の最先端、これがIPTVである。
IPTVはインターネットや高速IP通信網を通じて、コンピューター通信やテレビ放送までIP技術に変換して取り込んでしまうサービスだ。リアルタイムの放送を再送信するだけなら、他のサービスととりわけ大きな違いがあるわけではない。しかし、見逃した過去の放送を見ることができ、ビデオ・オン・デマンドシステムによって娯楽・教養・報道などの様々な映像を利用者の都合に合わせて視聴できる高機能テレビサービスが実現できる。採算に乗らないので既存のテレビ放送では機会が与えられなかった小企業が制作しテレビ番組でも放送できる点も大きな魅力である。きわめて多様なサービスが、テレビ画面を窓口として提供されることになったのである。
この背景にはいくつかの支援要因があった。インターネットを通じてテレビ放送を容易に配信できる「IPTV」の規格が標準化されて、パソコンソフト、テレビ端末へのインターネット機能の取り込みなどが当然のことになってきたことや、テレビの側のアナログから地上デジタル放送への移行などが、IPTVで簡単に実現できることが認識されてきたことなどが大きいだろう。
ただ、課題もまだ、たくさん残されている。最も大きいのは使い勝手がまだ、十分にユーザーの要求水準に近付いていないことだ。しかし、これも時間の問題だろう。10年で100倍の速度で性能を向上させる情報処理技術で、このヒューマンインターフェースの問題は解決されるだろう。
日本のIPTVの市場はもはや扉が開かれた。日本特有の高速光インフラを基盤に、世界に冠たる「通信の中にテレビがある」新しい市場が開拓されるだろう。そのパイオニアとしてのNTTの「ひかりTV」に注目している。