「エネルギー進化論」
著者:飯田哲也・環境エネルギー政策研究所所長
発行日:2011年12月10日
ちくま新書 780円+消費税
脱原発論者である著者の主張の源流を知ることができる。副題は『「第4の革命」が日本を変える』。自然エネルギーの歴史を跡付けて、日本はエネルギー資源が豊富であることを主張する。「日本はエネルギー資源を持たない国だから原発が必要」という論理がいまや時代遅れの認識であることを明らかにする。
「原発不要論」もデータを多用しながら展開する。世界的に原発への依存度は急速に低下している。それに対して自然エネルギーへの各国の投資の増大、依存度の高まりも多数のグラフによってはっきり見て取れる。もはや「第4の革命」である、自然エネルギーへの流れは止まらないかのように見える。
そうした世界的な潮流の中で日本の政策当局である経済産業省の施策は必ずしも適切とは言えない、と著者はエネルギー政策の誤りを指摘する。併せて政権政党となった民主党の政策のブレを批判する。
ただ、筆者の説にはやや個性の強すぎる持論の展開が見られ、部分的な納得とともに、違和感をもつ部分があったことも否定できない。エネルギー関係者の著者に対する批判を聴くと、自然エネルギー推進派の人からも著者の「強い思い込み」に対する危惧を指摘する向きも多い。翻ってみれば、しぶとく原発再稼働、原発復活を画する勢力が暗躍する状況の中では、これだけ個性の強い主張を続けなければ潰されてしまうということなのだろう。
インターネットは、ネットワークを介した情報の共有、分配、発信の仕組みである。この仕組みはデータの取り扱いからスタートして、画像、映像、音声と範囲を広げ、1対1の音声情報交換システムだった電話を吸収し、1対多の情報伝達の道具だったテレビ、ラジオなどの放送をいま、急速に飲み込もうとしている。その次に来るのはエネルギーの融合であろう。そのエネルギーは原発のような巨大な発電所で生成した電力を遠隔の消費地に送るという方式ではなく、多様な自然エネルギーをネットワークを通じて管理する「スマートグリッド」である。その相手のエネルギーの未来を知る上では、内容の豊富な教科書になるだろう。