「挑む力 世界一を獲った富士通の流儀」
2012年08月15日
■■ 「挑む力 世界一を獲った富士通の流儀」
■ 著者:片瀬京子、田島篤共著
■ 主催:内田洋行
■ 発行日:2012年7月9日
■ 日経BP 1,400円+消費税
帯の推薦のところで竹内弘高ハーバード大学経営大学院教授が「今こそ日本企業に学べ!」と激励を寄せているが、低迷が続く日本の情報企業にとっても「学ぶべき」経営の姿を見てみたいところである。
著者は日本の情報企業復活のキーワードに「世界一」を見出した。もちろん、世界最高速のスーパーコンピューター「京」を生み出した富士通の技術力に復活の可能性を予感したのである。なぜ世界一なのか? 「2位じゃダメなんでしょうか」。政府の事業仕分けの公開議論の場で、世界一のスーパーコンピューター開発を目指すプロジェクトが批判の矢面に立たされた。
この「京」のエピソードを冒頭に掲げて、株式売買システム、スバル望遠鏡・アルマ望遠鏡、「らくらくホン」、農業クラウド、次世代電子カルテ、手のひら静脈認証など、富士通が世界最先端で取り組む製品やサービスを、「ヒト」を中心に紹介してゆく。日本の情報産業界はかつての栄光を取り戻すことができるのか。多方面に展開する富士通1社をみても、まだまだ、潜在力があると感じるので、かつての情報企業の技術力、事業力を結集すれば、曙光は見えるのではないか。
内容は、やや著者が取材対象にのめり込んでいるきらいがあるが、その程度の「ほれ込み」がなければ一冊の著書を完成させることはできないだろう、と見よう。重要なのは、日本の情報産業復活の芽を見出したことである。