■■ 「競争に勝つ条件」
■ 編者:経営イノベーション50研究会
■ 発行日:2012年8月16日
■ 日経BP 2,800円+消費税
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久しぶりにICTが経営イノベーションを起こすということを確信させるような「教科書」が出た。特に目新しい発見があるというわけではないが、大きなICTの発展の流れをつかむことができる。ヤマト運輸の宅急便、セブン-イレブン、新日鉄、トヨタ、コマツなどの企業がいかに情報技術をてこにして市場革命を起こしてきたか、インターネットの発展を利していかに楽天が流通革命を起こしつつあるかなどが次々と項を改めて論じられる。こうして振り返ってみると、ICTが変えてきた企業、市場、ビジネスの姿がはっきりとつかめる。
特に第2部の「ICTの興亡50年史」は単に発展をたどるのではなく、繰り返される主役の交代に焦点を当ててその法則性を抽出しているのが参考になる。経営者がICTを使いこなす勘所として、大きな法則性を理解して「ICTに関する大局観を持て」と結論づけている。
では、その法則性はどんなものか。
・ICTは一方向に進化するのではなく「スパイラルアップ」してゆく
・進化を促す要因は既存のICTの「外」からやってくる
・時代の覇者は1番手ではなく2番手の企業の中から登場する
・消費者や企業人、専門家など多くの利用者を集め続けた企業が覇者の座に就く
・50年間にわたって課題であり続けているのはソフトウェアの生産性である
経営者は最新のICTに関心を持つ必要があるが、こうした大局的な法則性を理解したうえでないと、判断を誤る、と警告している。