「使用済みの発泡スチロールの処理は、絶対、皆、困っていると思うんですよ。これまで、埋めるか、燃やすか、そういう処理しかなかったのを、もう一度、資源として再利用できる装置なので、需要はあるはずなので、どういう風にそこへ普及させるのか、教えて欲しい」――うちなーぐち(沖縄抑揚)の早口で環境装置メーカー「日進」の津嘉山貞雄社長は一気にしゃべった。日進は那覇市に隣接する西原町に本社を置く、小さな環境装置メーカーである。
「津嘉山社長は説明がうまくないので、ポイントがうまく説明できていないので補足すると・・・」と、仕事仲間の元世界ジュニアウエルター級チャンピオンで「株式会社平仲」の平仲信明社長が助け船を出した。「平仲」も環境問題を手がける会社。日進の装置にも注目して、販売の手助けをし始めたという。
日進が、開発したのは、「発泡スチロールリサイクル装置」。まず、前段階として、米国から輸入した溶液を使って発泡スチロールを液体に溶かす。小型トラックで使用済み発泡スチロールを置いた場所に出向き、荷台に載せたドラム缶を一回り大きくしたような容器の中に発泡スチロールを入れると液状に変化して、容積が100分の1程度になる。これで輸送コストが数十分の一に削減できるのだそうだ。
次の処理工程の装置が「日進」開発のリサイクル装置だ。小型トラックで運ばれてきた溶液をリサイクル装置に入れると、一部はガソリンとして回収され、一部はプラスチックの原料として利用できる樹脂のインゴット(延べ棒)になって再利用可能になる、というものだ。類似のものは高額のものも開発されているようだが、日進の方式では現在の価格で1台650万円。既存の装置に比べて数十分の一という安さだという。
平仲社長によると、輸送コストや樹脂インゴットの販売収入で650万円は1年程度で回収できるのではないか、と言う。どの程度の収入が得られるのか、装置の耐久期間や運転・保守のコストなど、投資回収期間の計算はもう少ししっかりしたものが欲しいが、そうした計算や販路開拓のための知恵がないので、教えて欲しい、というのが津嘉山社長の発言の趣旨である。
沖縄県は産業として製造業があまり発達していないイメージである。確かに自動車や精密機械、家電など、世界市場で活躍する大企業は存在しない。石油関連の施設を除けば、地域に供給する食品メーカーや自動車整備、漁業関連装置などのメーカーなど、「全国区」のメーカーはなかなか思い浮かばない。わずかに食塩と泡盛が全国に広がり始めているところだ。
津嘉山社長は、海の向こうの諸国から離島の海岸に流れ着くごみ、とりわけ発泡スチロールの処理に困っている離島・市町村の痛切な悩みを聞いて装置の開発に取り組んだという。すでに石垣島でこの装置の実験をして、効果が分かったという。沖縄ならではの発想で装置開発に成功したわけである。
沖縄には製造業は向かないというのは筆者の錯覚だった。社会が課題を抱えたところに、アイデアが生まれて、そこに機械が必要ならば製造業が発展する。その抱えている課題が時代の流れに即しているものならば、大きなメーカーに成長することもあろう。「環境」をキーワードにしたこの機械が実用化されるには、石油化学や樹脂に詳しいベテランのマーケッターが必要である。沖縄に行って、一緒にやろうと志す人はいないだろうか。
沖縄が求める人材の新たなイメージが浮かび上がってきた。