沖縄の「IT立県」を目指すソフトウェア開発拠点「沖縄ソフトウェアセンター」が10月1日にスタートした。形式は、平成14年に設立したソフトウェア開発の共同会社「フロンティアオキナワ21」の改組ということになっているが、今回、「オール沖縄」を鮮明にして、参加企業も大幅に拡大、再出発するものである。
現在は那覇市に本社を置くが、いずれ、中部・うるま市に建設する沖縄のIT産業団地「IT津梁(しんりょう)パーク」の中核施設に入居する予定だ。IT津梁パークの象徴的存在としての活動が期待されている。沖縄県は若年労働者の失業率が高いが、その理由の一つは県外から本土への就職に躊躇して県内に止まって就業を希望する若者が多いことだ。家族もまた、子弟たちに沖縄に止まって就労することにこだわる傾向が強い。
その受け皿として、沖縄県内の産業振興が焦眉の急だが、沖縄の自然環境を壊さないクリーンな産業、ソフトウェア開発が期待されているというわけだ。ただ、沖縄県内にソフトウェア需要があるわけではないので、仕事は本土から受注し、高速回線で本土各地と結んで一体的に開発作業を進めるための拠点を目指す。もちろん、本土からベテランのソフトウェア技術者を招いて沖縄の若者たちへの技術移転を期待している。
「オール沖縄」を標榜するだけに、参加企業も幅広い。琉球銀行、沖縄銀行などの現地金融機関をはじめ、沖縄最大の情報サービス企業であるオーシーシーや地元で成長中の琉球ネットワークサービス、オープンソフトウェアの有力企業おきぎんエス・ピー・オー、有力システムディーラーの創和ビジネス・マシンズ、地理情報システム開発のジーエヌエーやハーベル、沖縄ソフトウェア事業協同組合など沖縄県内企業のほか、沖縄出身の経営者が創業した日本アドバンストシステム、本土企業の沖縄進出拠点ですっかり現地化している国際システムやインデックス沖縄、沖縄日立ネットワークシステムズ、グロヴァレックス沖縄などが名を連ねている。発足時点で45企業・組織で資本金は2億5000万円強。
開発業務を受注する関係から、さらに本土企業の出資を要請することが予想される。位置づけは「沖縄オフショア」。つまり、現在、中国や東南アジアで「オフショア開発」している仕事の一部、セキュリティや日本的な業務内容でアジアでのオフショア開発ではうまく行かなかった開発業務を「Jターン」して沖縄が引き受けようという狙いだ。アジアに最も近い地域の沖縄が本土とアジアを結ぶ「ハブ」としての機能も果たせる、と地政学的な新しい観点からの挑戦である。リゾート地としても魅力ある沖縄を、ITビジネス就労者の快適な作業場所として発展させることができれば、日本のIT産業の新しいスタイルを生み出すことになるだろう。