仲井真弘多知事ら一行が、米国のIT企業のメッカ、カリフォルニア州のシリコンバレーを訪問中である。IT津梁パークなど、沖縄県の企業誘致への施策を宣伝し、米国のIT企業の進出を促すのが目的である。沖縄県は内地の日本企業誘致で約200社の進出を受け入れてきたが、さらに職場を拡大するために、第2弾として外国企業の誘致に本腰を入れ始めたといえる。
すでに米国系の金融機関のコールセンター、グローバルなカード会社の決済業務を行うデータセンターの進出など、沖縄県の立地のメリットを認めた外国企業の進出が目立ち始めている。
特に、沖縄県の地政学的な位置である。東アジアの中心地に近いということだ。世界の中心が米国であるこれまでは、アジアの東側のへき地にある東京が米国に開いた窓口である。しかし、ヨーロッパがEUとして一つのまとまりを形成し、米国はかつてのリーダーシップを持ち続けられるかどうか、と考えると、東アジアをまとまりとした新しい経済圏を形成して行かなければ、世界経済から脱落してゆく恐れがある。
その際、日本国内で、最も東アジアの中心に近い地域が重要になるガ、そこが沖縄県であることは間違いない。福岡県、大阪府なども、アジアとの連携を掲げているが、シンガポール、タイ、ベトナム、香港、中国、台湾、韓国、フィリピン、インドネシアと地図で確認してゆくと、東京はやはり、この地域では端っこである。新しい東アジアの経済圏の中で中心地に近いのは日本の中では沖縄県ということになる。
通信回線がさらに高速、大容量になるに従って、空間的距離はそれほど重要なファクターでなくなるのは確かだが、通信回線でコミュニケーションを十分に確立するためには、時々、実際に会合して飲食を共にすることが効果的である。それには観光地としても魅力ある場所、飛行機で移動するのに、それほど苦痛を伴わない距離、という立地がポイントになる。香港はその有力候補だが、自然が魅力的で、気候の温暖な沖縄もまた、有望な候補地である。もちろん、沖縄は県土が狭いので、広大な敷地を必要とするような製造業では苦労が伴うが、人間が資源となるソフトウェア開発やオペレーションセンターなどには適している。
気候が温暖であるという利点は、冬季に厳しい気候となる中国や韓国の寒冷地の人々には魅力的だろう。また、高温の東南アジアに比べると沖縄の気候はなじみやすい。欧米企業のアジア経済圏への進出拠点としての価値だけでなく、東アジア企業の業務拠点の一つとしても価値がある。沖縄はさらにIT産業集積の可能性を秘めているといえる。
海外企業の誘致、沖縄県の活動は、これから活発になってゆくだろう。