IT産業の集積拠点として08年度、建設を進めてきた沖縄IT津梁(しんりょう)パークはいよいよ09年度から利用が始まる。現在建設中で3月中に完成予定の「中核施設」のA棟はすでに入居企業が決まって満杯になった。沖縄県内のソフト開発企業、金融機関などの共同出資会社「沖縄ソフトウェアセンター」などが 入居する予定という。
昨年の米リーマンショックに始まる不況。IT投資の先送りが続出するという「逆風」の中でのスタートとなったため、当初、進出を希望していた企業には、計画を修整するところも出ている模様である。今後の景気の見通しが立たない状況では、すべての計画がストップしているので、多額のIT投資を伴うスケジュールを見直すのも仕方がない。
しかし、その中でもセキュリティや内部統制などの事業、経費コストダウンのための経営構造改革を進めるBPO(経理、営業企画、ヘルプデスクなどをアウトソーシングするサービス)センターなどは各企業の拡大意向は健在である。IT津梁パークへの進出は当面はそうした分野で前進しそうだ。当初計画とは、進出シナリオが変わるかもしれない。中国など、アジア企業の進出打診も増えてきている。
同パークは沖縄県中部のうるま市の海上に埋め立て工業団地として開発された地域を利用する。当初計画では13棟のオフィスビルや商業施設を建設し、パーク内には居住用の高級住宅も併設する。内地から進出する企業の幹部社員の社宅を想定している。沖縄の魅力を生かしたレジャー施設も周辺に準備する予定である。このパーク内で8,000人の雇用を目指しているので、沖縄としては人口集中地域になる。
ただ、まだ整備が必要である。
一つは沖縄自動車道からのアクセス。最も近いのは沖縄南インターだが、現在は一般道に入って30分程度はかかる。現在、幅員の大きな取り付け道路を建設中で、完成すれば半分くらいに短縮されるだろう。自動車道が那覇空港と直結すれば沖縄南インターまで自動車で20分足らずなので、空港からは30分程度の立地になる。とはいえ、通勤者は料金の高い自動車道ではなく一般道を使うので、那覇市内からの通勤には不便である。那覇市内から自動車道を経由する直行バスを準備する必要があるだろう。
ビジネスホテルの誘致も課題である。パークへの進出が軌道に乗るまでは宿泊客は少ないので、2,3年は我慢しなければならない。会議室、研修室、テレビ会議室などを併設すれば、いずれは高収益施設になるはずだが、誘致はこれからである。宿泊施設が那覇市や周辺の高級レジャーホテルでは、出張者には不便である。
課題は残るものの、見通しははっきりしてきた。IT集積地域、沖縄への次の飛躍が始まったといえるだろう。