総選挙に見る沖縄事情

総選挙に見る沖縄事情

 元々、米軍基地反対闘争の県である。沖縄の本土復帰以来、2代は革新系知事が続いたくらいだから、今回の総選挙の結果に驚く必要はないかもしれないが、それでもびっくりした。沖縄県に4つある小選挙区は、民主党2議席、国民新党1議席、社会民主党1議席で、自民党は2つもっていた議席を失った。九州の比例区でも沖縄の候補者は復活できなかったので、今次の国会では衆議院には沖縄の議員はゼロになった。


 県知事は前知事、現知事と2代続いて自民党系なので、沖縄県民の政治意識が一気に自民党離れを起こしているわけではない、という指摘もある。全国で見れば、今回の自民党の敗北は昨秋、自民党の総裁候補者が手詰まりになって麻生首相を選んだ、というところで決定づけられたものである。年金問題の取り扱いに失敗して参議院で過半数割れした与党は、衆議院3分の2の力で参議院を無視して政策を強行したが、やはり、無理を露呈して次々に首相が交代し、最悪のカードである「麻生首相」に行き着いてしまったのである。今回の選挙は自民党不支持、というより、麻生不支持で選挙民の投票行動が決したが、結局、麻生首相しか選出できなくなった自民党の敗北であることには間違いない。

 その衆議院選挙の政見放送で嫌われ者の麻生首相と対談したのが、不幸にも、沖縄県選出の女性参議院議員だった。沖縄の選挙民にとってみれば、沖縄県の自民党候補がイコール麻生首相というように同一視されて、国民的な「麻生降ろし」の大津波に飲み込まれてしまったのではないか。

 「自民党の衆議院議員ゼロ」は基地問題に関して言えば不安材料である。米軍基地に対して民主党の姿勢は厳しい。ただ、外交問題は右から左と簡単に舵を切り換えてしまうわけにはゆかない。米軍も沖縄を直ちに全面撤退するわけにはゆかないので、現在進行中の基地縮小のプログラムを加速させるような事態の変化は起こらないのではないか。

 とはいえ、これまで補助金を頼りにしてきたけれども、沖縄は、すでに自立への覚悟を決めている。今回の総選挙の結果は、時代が大きく転換したことを象徴するものである、という事実を忘れず、この変化を過小評価せず、「自立」を前提にした「未来の沖縄」の設計図つくりに本腰を入れて取り組んでもらいたいものである。その時に、時代の飛躍を心に刻むために、「沖縄」を「琉球」に呼称変更はできないものか。道州制で沖縄が単独州になるとき、「琉球州」にするのは、新たな出発にふさわしいと思うのだが。

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