沖縄振興審議会専門委員会で、八重山漁業協同組合の上原亀一組合長と同席する機会がこのところ増えている。日焼けした精悍な組合長だが、会議では良く通る声で、沖縄漁業の抱える苦境をデータによって、るる説明してくれる。沖縄社会を支える大きなファクターとしての水産業を理解することができる。
上原組合長の発言でショックを受けたことの一つは、「もずく」の需要減退である。「もずく」には追い風が吹いているはずだ。他の食品とは比較にならないほど豊富に含まれる成分「フコイダン」には、がんの抑制効果が顕著にみられるという研究成果が学会で発表されて、注目を浴びている。
がんにはことのほかに敏感な筆者などは、その報に接してから、スーパーで目に付くと直ちに「もずく酢」の加工食品を買い物かごに入れている。他の消費者も同じかと思ったらそうでもない。一時の低カロリーの健康食品としての「もずく」のブームが去って、内地の食品加工会社が沖縄のもずくの原料買い付けを手控えているのだそうだ。農産物・水産物価格は、需給バランスが崩れると、採算割れを覚悟して争って投げ売りが始まる。今回は通常を逸脱した需給バランスの乱れだそうである。
これで生産にブレーキがかかって再び需給タイトの高値が招来するかと想像すると、危機感を抱かざるを得ない。がんの抑制効果が伝えられても、消費が動かないのは異常だが、供給過少の状況で、価格が高騰するのも、愛好家としては異常に映る。
フコイダンのがん抑制効果を求めて、生産者と消費者が互いに「もずく」で結ばれあう時代が来ることを夢見るのは筆者のひそやかな願いである。ただ、「もずく」は内地では輸送費の関係で価格が高い。沖縄で価格の安い「もずく」をたっぷり食べる新しい生活環境を求めるのも一つの道かもしれない。