民主党鳩山政権の誕生で、普天間基地移転問題の再燃など、沖縄はどうなるのか、甚だ心もとない思いだったが、ここに来て新年度予算の中身が分かってくるにつれて、新政権での沖縄の位置がだんだんはっきりし、多少なりともホッとしている。
特に、公共事業関係では全国的に18%の削減という中で、沖縄関係は6%程度のやや小幅な削減で済んだとのことである。考えてみると、前回の衆議院選では、民主党と国民新党が全選挙区で当選し、比例区も沖縄からの立候補で他の党からはなかった。結果的には、オール与党の県になったわけで、従来からのパイプを新しいパイプに切り替えるのは苦労があるだろうが、一度出来上がってしまえば、要望は通りやすかったのかもしれない。
今回の予算で最も注目すべきなのはLRT(次世代型路面電車)建設に向けた調査予算が3000万円、計上されたことである。沖縄には戦前は軽便鉄道が走っていたが、戦争で破壊されて、以降、長い間、鉄道のない県だった。先年、モノレールの「ゆいレール」が飛行場から首里城まで開通し、高利用の実績を上げた。
道路に軌道を埋設する「路面電車」というので、時代が逆戻りするような錯覚にとらわれるが、実は高度な技術で高速化が可能。那覇市と北部の中心である名護市を30分程度で結ぶと言われる。従来は、名護市との間は、自動車道路を使っても、1時間以上かかっていたので、生活の利便性だけでなく、ビジネスに利用できる地域が一気に拡大して、沖縄経済の活性化に大きな役割を果たすだろう。現在は自動車に依存しているが、低炭素社会への大きな一歩としても期待できる。
ゆいレールができて、鉄道の便利さを沖縄県民だけではなく、観光客にも実感されている。北部に行く観光客にもその利便性は高く、沖縄のリゾートの魅力がさらに増すだろう。美ら海水族館や今帰仁城跡も近くなる。本格的な長距離輸送用の鉄道の建設は、次の沖縄の発展の起爆剤になりそうだ。大いに期待したい。