現在、うるま市に建設を進めているIT産業の集積拠点「IT津梁パーク」は、最初の施設として予定した2つの棟については完成したA棟の入居は終わり、建設計画のB棟は、申し込みがほぼ満杯の状況で着々と構想が実現しつつある。IT津梁パーク座長として構想をまとめた筆者としてはほっとしているところだが、また、津梁パークを一歩進める新しい構想が沖縄県庁から打診されている。
地域的にアジアの中心に近い沖縄に、アジアの情報センターとしてデータセンターの基地を作れないかということである。実は、津梁パーク構想の検討時に、データセンターを誘致する、という話も出た。しかし、最終的に津梁パークをうるま市の埋め立て地域として完成している自由貿易特区の敷地内に構築することになって、海岸埋め立て地に、耐震設計や安全性に厳格なデータセンターを作るのは難しい、ということで、検討からはずされた経緯がある。
耐震設計などが必要となると、地盤の整備などで高額の経費がかさんでくる。土地のコスト、労賃のコストが有利という沖縄のメリットも相殺されてしまうだろうという判断からだ。しかし、コンテナ型のデータセンターのアイデアが登場するなど、必ずしも固定の頑丈な構造物が必要でなくなる可能性もある。そうなれば、別の観点、特に、地政学的に沖縄が東アジアに突出した厳格な日本の法律の通じる地域、品質の高い日本の伝統的な慣習の生きる地域というメリットがデータセンター分野で通じるのかどうか、再検討する必要がある。
そこで「沖縄クラウド研究会」のようなものを発足させて至急、この点を検討し、東アジアの中心近くに位置する沖縄の価値を検討しようということになった。筆者もこれに参加し、是非、新しい沖縄のポジションを確立するのに力を貸したいと思っている。そのキックオフも兼ねて2月9日、那覇市のホテルパシフィック沖縄で「クラウドコンピューティングセミナー~沖縄におけるクラウドの可能性を探る~」と題して筆者の「クラウドコンピューティングが起こす大変革」をはじめ、日本ヒューレット・パッカード株式会社 赤井 誠氏、グーグル株式会社 杉水流智之氏、株式会社日立製作所 前田 みゆき(まえだ みゆき)氏、株式会社レキサス代表取締役 比屋根 隆氏 沖縄県商工観光部長勝目和夫氏による講演とパネル討論が行われる。
クラウドコンピューティングの本質は何なのか、自治体クラウドは沖縄でどういう意味を持つのか、南国の沖縄では課題になっている冷却はどうするのか、はたして、どんなメリットがデータセンター業界、あるいはユーザー企業にあるのか、などを多角的に議論することになっている。
はたして、沖縄をクラウドコンピューティング・アイランドに構築できるのか。筆者は、できると信じているのだが。