中学時代の筆者の級友の部下だったという縁で、突然、沖縄に移住する予定だという方から手紙を頂戴した。沖縄の魅力に惹かれ、数十回も訪問した末に、会社を定年退社するとともに夫人とともに移住するというのである。小さなホテル兼レストランを沖縄北部で経営するそうだ。
ビジネスを船出するには、今現在は必ずしも絶好の時期ではない。新型インフルエンザ騒ぎで、沖縄の観光客の数はめっきり減っている。とはいえ、減っている中心は修学旅行のキャンセルだそうだから、新たにオープンする観光客向けの施設は、努力次第で、集客を見込めるかもしれない。
沖縄の状況を聞くと、最近の傾向では、中国人の観光客が増えているようである。それも高額のリゾートホテルに宿泊してゆくようだ。中国国内でベンツや外国高級車が売れるのと同じ根っこを持つ話だろう。「一衣帯水」というが、沖縄こそ、海を越えて中国のすぐ隣の地域である。中国本土にない美しい海、青い空、温暖な気候――中国から飛行機でほんの2、3時間のところに別天地がある。今後、中国からの観光客は急増するはずである。地元大手旅行会社も、チャーター便を11便、中国に手配して、すでに完売だそうだ。
沖縄の主要ホテルが中国観光客で埋まれば、内地からの観光客は北部の宿泊施設へとシフトしてくるだろう。現況が厳しいと言っても、未来が暗いわけではない。
ただ、心配されるのは、受け入れる沖縄の観光業界に中国語で接客できる人材が不足しないか、ということだ。中国人の生活習慣の知識があるかどうかも、今後の決め手になるだろう。
英語をしゃべれる人は内地にも沖縄にもたくさんいる。しかし、中国語となるとさっぱりである。日本の今後を考えてみると、中国語の教育、中国への留学生の送り込みの重要性が見えてくる。観光産業ひとつとっても、中国語の必要性を痛感させられる。