アジアへの窓口~~沖縄GIXが生み出す新産業

アジアへの窓口~~沖縄GIXが生み出す新産業

 那覇と香港を高速インターネットで結んで実験をしてきた「沖縄GIX(グローバル・インターネット・エクスチェンジ)」プロジェクトが3月末で終了した。沖縄県は、その継続事業を国に要請して来たが、「仕分け」に翻弄されてきた政府はこの申請を取り上げなかった。しかし、沖縄GIX構想はこれで幕を閉じたわけではない。沖縄県の単独事業として、少し、断絶はできてしまうが、近く、新たな仕組みでスタートする。

 今回は実験ではないので、採算性を考慮しながら、小さくスタートして重要に応じて増強してゆく体制で準備している。実験では、那覇と香港は直接に回線で結ぶのではなく、台湾まではKDDIの回線、台湾―香港はインドの通信会社の回線を借りて台湾で接続していた。那覇と本土はNTTの回線につないでいたので、中継数が多かった。

 それでも本土から香港につなぐ通常のルートよりは遥かに高速で、実験結果は、沖縄GIXが十分に効用をもたらすことを示していた。今回は那覇から香港まで直接にNTTの回線で結ぶので、中継数が少なく、さらに高速のインターネット通信が可能になることが期待される。
さて、その効果だが、実験を利用した中堅の証券会社の事例では、香港の証券所の取引への対応の時間が短縮されたという。速さが勝負の金融ビジネスでは、沖縄にオペレーションの拠点を置くことが有利なことが実証された。今後、流通、製造業でもアジアへの事業展開が拡大してゆくと思われるが、ウェブカメラを利用した多角的なオペレーションを行って行くには、この沖縄GIXが有力なインフラとして機能することになるだろう。

 沖縄に「アジア事業本部」を設けてデータ交換の遅れを少しでも縮める動きが起きてくるだろう。通信の世界では情報は1秒間に地球を7回り半も駆け巡ることになっているが、これは情報の中継や交換、信号の変換がない場合で、インターネットのように信号変換が多い技術では、速度は大幅に遅れる。ミリ秒を争うような金融ビジネス、遅れが気になるようなWEB会議システムなどでは、できるだけ地理的に関係エリアの中心に近い場所にオペレーションの拠点があるほうが有利である。アジアの中心に近く、また、厳格な法制度が完備している日本の管轄下、ということになれば、その場所は沖縄しかない。

 アジア経済が大きな飛躍期に差し掛かったのを機会に日本企業のアジアシフトはいよいよ顕著になるだろう。沖縄GIXは多くの内地の企業のアジア事業拠点を沖縄に誘致するインフラになる。また、その周辺にどんな新産業が生まれるのか。今から構想し、準備しなければならない。

これまでの掲載

中島情報文化研究所 > 執筆記録 > 美ら島大使 沖縄報告 > アジアへの窓口~~沖縄GIXが生み出す新産業