縦貫鉄軌道の検討始まる

縦貫鉄軌道の検討始まる

沖縄の南北の一体化を実現する縦貫鉄軌道
~~ポスト沖縄振興計画の目玉になるか~~

 2002年度から10年間の沖縄振興計画が2011年度で終了するのを受けて、沖縄振興審議会では、これまでのレビューと次期振興計画を作成するかどうか検討を進めているが、次期計画の中身の候補として南北を縦貫する鉄軌道の建設が書き込まれそうだ。新幹線整備の法律として特別に「新幹線整備法」があるが、それと同等の「沖縄鉄道整備法」などの立法化も働きかけてゆく。

 沖縄は第二次大戦前は軽便鉄道があったが、全土が焦土と化してからは鉄道のない地域となり、やっと2003年、那覇空港と首里城公園を結ぶ全長約 13キロのモノレール「ゆいレール」が運行されるようになった。しかし、それ以外はほぼ自動車による移動に頼ることになるが、県内各地域を、大規模な米軍基地、米軍施設が占拠しているため、道路は複雑に曲がって、公共輸送機関としてのバスは利用しやすい輸送手段とは言えない。

 特に、北部の中心都市の名護市は自動車道路があるものの、那覇市からの移動には時間がかかり、かねて交通渋滞に左右されない鉄道の建設が要望されていた。

 昨年、調査費が認められて県が調査したところによると、那覇空港から中部の沖縄市までの約25キロを結ぶ「沖縄ルート」は11駅で所要時間24 分。南部の糸満市と那覇空港10キロ弱を結ぶ「南部ルート」は4駅、8分、沖縄市と名護市46キロを結ぶ「北部ルート」は6駅、38分とされている。

 問題は工事費だが、一般の鉄道では1キロ当たり建設費が200億~300億円、専用軌道を多用途で使用するLRTで1キロ当たり建設費が20 億~200億円となっている。事業費は沖縄ルートで4000億円、糸満市から名護市を結ぶとなれば、8600億円にのぼる。大土木工事の需要が発生する。建設業界では大歓迎だが、その予算をどこからねん出するのか。

 ただ、これまで孤立していた中部・北部の地域が鉄道で結ばれれば、住居事情も変わり、産業地図も大きく書き換えられる可能性がある。単に土木業界が潤うだけでなく、北部地域、南部地域も、全島的に通勤圏内になって、本島全体に産業誘致が可能になる。ソフトウェア開発業、コールセンター、データセンターなど、那覇市周辺に集積している事業所施設の分散化が図れるだろう。

 縦貫鉄道の建設は、沖縄に新しい時代の到来を告げるようである。

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