沖縄エネルギー基地構想 ~「バイオ燃料」の可能性

沖縄エネルギー基地構想 ~「バイオ燃料」の可能性

 沖縄は電力料金が高い。IT企業の誘致の際に、このことをよく指摘される。沖縄電力の説明によると、その原因は多数の離島を抱えて、効率の悪い小規模分散発電をせざるを得ず、それが本島のコストに跳ね返って、内地に比べると割高な電力料金になってしまっているそうだ。しかし、こうした不利な条件を持つからこそ、新しいエネルギーへの挑戦の機会もある。最近、話題になっている新エネルギーは亜熱帯性の植物「ヤトロファ」によるバイオ燃料だ。

 ヤトロファは「南洋油桐(なんようあぶらぎり)」とも呼ばれる亜熱帯性の落葉樹で、低木である。種子に豊富な油脂分を含むが、毒性も強く、食用にはならない。その毒性のために害虫が寄りつかないので、農地などでは害虫よけの防護柵にも利用するほどだそうだ。もう一つ、毒性が強いことのメリットがある。害虫がつかないので農薬をまく必要がないことだ。また、干ばつに強く、酸性、アルカリ性、どちらの土壌でも育つという。

 油脂分は30%を超えて非常に効率のよい食用油原料になるはずだが、毒性のために敬遠されてヤトロファ栽培はそれほど普及していなかった。しかし、植物性で、炭酸ガス排出に中立なのでバイオディーゼル燃料として注目され始め、世界各地で栽培が広がっている。トウモロコシや大豆に比べると油脂分が豊富だという事以上に、食用穀物を燃料に転用することによる食糧の需給ひっ迫を回避できる点がメリットでもある。

 気候からすれば、ちょうど沖縄には適している。インドなどでは、食用穀物栽培の農地をヤトロファ栽培に切り替えるところがあって、食糧との競合を引き起こすケースもあるようだが、沖縄の場合は補助金頼みの過保護な農業生産をしている作物もあるので、これに代わる農産物として栽培を拡大する可能性があるのではないか。現在は輸入石炭や石油ディーゼルに依存する火力発電を「地産地消」の県内産品によるエネルギーに転換できる可能性がある。エネルギー自給率は一気にアップするだろう。沖縄は電力コストが高い分、ヤトロファの生産コストが程度高くても競争力が出てくる。

 太陽光、風力に次いで、県内の資源による第3のエネルギー源となる可能性がある。さらに多くのエネルギー源を開発して、現在の脆弱なエネルギー調達の状況を改善して、沖縄が「エネルギー基地」へと転換することも可能かもしれない。

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